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 頭部Kopf. 頚の上にのっている頭はかなり自由によく動くのである.頭には幾多のめだった特性があるが,それは次に述べる3つのことがらによっている.1. 脳がはなはだ大きく発達していること;2. 特別な感覚器(Oculus, AugeとAuris, Ohr)がここに存在すること;3. 呼吸器と消化器の最初の部分(Nasus, NaseとOs, Mund)がここに加わっていることである.

 動物界を通じてみると,頭を特徴づける上述の諸点がいっそう著しいものほど,頭がいっそうよく胴から区別されている.逆にその著明さが少ないと,それだけ頭が胴と似てしまうのである.例えばナメクジウォAmphioxus lanceolatusがこれである.

 頭は外から見てもかなりはっきりと境のつけられる2つの部分からできている.すなわち頭蓋Cranium, Hirnteil,と顔面Facies, Gestichtsteilである.

 言葉の慣用に従うと,(すなわち前頭)Frons, Strirnも顔面の一部である.しかし,解剖学では額は脳をつつむ頭蓋の一部に数えられるので,顔面は鼻根の高さ,その外側では眉毛の下からはじまる.

 脳を包む頭蓋の部分を前方からみると,額は円蓋状の頭,ことに前頭部Vorderhauptを前方より仕切るものとしてみえる.そして下方へは鼻根と左右お目に境を接し,眼との境界に弓状をなして眉毛Supercilium, augenbrauenbogenがある.額の上外側に前頭結節Tubera frontalis, Stirnhöckerという2つの円みをおびた高まりがある.側頭隆起Schläfenwulstによって額は側頭(こめかみ)Tempora, Schlägenから境される.また額は上方と側方へ向かっては毛がたくさん生えている頭蓋の領域につづいて,頭頂Vertex, Scheitel, すなわち頭蓋上の頭のここでは頭頂結節Tubera parietaliaと側頭隆起Schlägenwulsteが特別なところとしてあげられる.側頭隆起の下方に側頭があって,これは頬骨弓Jochbogenというだいたい水平に走る高まりまで伸びる.この頬骨弓が頭の側面で顔面との境をなしている.とうとうすなわち中等部の後につづいて後頭Occiput, hinterhauptがあって,これが円蓋状の頭を後下方から閉じる部分である,後頭には項の初まりの上方に後頭結節Hinerhaupthöckerという横に伸びた高まりが認められる.また側方では耳介Auricula, Ohrmuschelの後ろに乳突隆起Warzenwulstがあって,その名前は側頭骨の乳突部によるものである.乳突隆起と耳介と後下顎隆起hinterer Unterkieferwulstとの間に下顎後部Regio retromandibularis, Unterohrgegendとよばれるへこみがあって,これは下方に向かって頚の外側面につづいている.

[図151]人体の諸部分 頚と頭.(His, Die anatom. Nomenclutur 1895の図を基にして,Fr. Kopschが用語をJ. N. A. に合わせて書き改めたもの.)

 もう一度前の方をみると,眉毛の下方につづいて上下の眼瞼Palpebra superior, inferior, Augenlinderがあり,その間から眼裂Rima palpebrarum, Lidspalteを開いているときは眼球Bulbus oclui, Augapfelの一部がみえる.眼の部分は下方は頬に対して下眼瞼溝Sulcus palpebralis inferiorという深い溝によって境されている.左右の眼の間に錐体状の高まりとして外鼻Nasus, Naseがあり,これは嗅覚器の正面構造であり,同時に呼吸器の入り口をなしている.



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最終更新日11/02/21

 

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