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 椎弓の閉鎖部は太くて丈が高いが,下位の腰椎では高さが減じている.閉鎖部の上縁と下縁とは滑らかでなくてギザギザしている.棘突起は強大で,両側から押しつけられた形で,ほとんどまっすぐ後方へ向かっている.その後端は厚くなっていて凹凸が多い.椎孔は広く,三角形ないしは横に長い菱形をなしている.

δ)仙骨Os sacrum, Kreuzbein (図187190,193)

 仙骨は上方は幅が広くて厚いが,下方は細くて薄く,全体としては三角形のシャベルのような形である.仙骨は5つの脊椎と,それらに属する肋骨痕跡とが骨性に癒合してできたものである.

 前面Facies pelvinaは上下の方向では強く弓なりにへこんでいるが,横の方向にはほんのわずかにへこんでいる程度である.前面で眼だっているのは4本の横走する隆起すなわち横線Lineae transversaeであって,これは5つの椎体のたがいに癒合した所に当たっている.これらの線の両端には4つの大きい孔があり,これは下方のものほど少なくなっていて,前仙骨孔Foramina sacralia pelvinaと呼ばれ,この孔は外側へ溝になって続いている.第3仙椎の体の中央のあたりで,仙骨が急に弯曲しているのが普通である.

 背方の凸出した面すなわち後面Facies dorsalisは,よく発達した例では正中線上に中仙骨稜Crista sacralis mediaという隆起があって,そこに4つのかなり強大な突起が出ている.この突起がつまり仙椎の棘突起の端なのである.それほどはっきりしたものでないが,その左右に1列ずつ縦に並ぶ凹凸は,関節仙骨稜Crista sacralis articularisとよばれ,各側の関節突起が癒合した部分に当る.一番上の関節突起すなわち上関節突起Processus articularis cranialisは自由端をなしていて,第5腰椎の下関節突起を外側から抱きこんでいる.また一番下の退化的な関節突起は各側で角のように下方へ伸びているので,仙骨角Cornu ossis sacriという名がついている.両仙骨角と,最下またはその1つ上の棘突起との間に,門のような形の仙骨管裂孔Hiatus canalis sacralisが開いて,脊柱管の仙骨部すなわち仙骨管Canalis sacralisに通じている.関節仙骨稜の外側には各側に4つの後仙骨孔Foramina sacralia dorsaliaがみられる.

 各仙骨孔は仙骨を矢状方向に貫く斜めの短い管の端である.そして椎間孔Foramina intervertebraliaが,仙骨管から外側にでる仙椎間管Canales intersacralesという道をなして,この短い管に内側から開口するのである.

 後仙骨孔の外側には各側に,今までのとは別のひとつづきのデコボコした隆起があり,これを外側仙骨稜Crista sacralis lateralisという.この隆起は癒合した各横突起ならびにそれに属する靱帯群の後縁に当たるものである.そしてここはもう仙骨の外側部に属するのである.

 仙骨の外側部Pars lateralisというのは,仙骨孔よりも外側にある全領域のことである.この部分は各横突起ならびにそれに属する肋骨痕跡や靱帯群が癒合しあって生じるのである.外側部には寛骨と結合するための,耳介の形をした大きい関節面があって,たいてい(60%)仙椎2つ半にまたがってひろがっている.この耳状面Facies auricularisの後方には凹凸のある,外側仙骨稜に続く領域があって,強力な靱帯群の付着部をなしている.これが仙骨粗面Tuberositas sacralisである.仙骨の尖端すなわち仙骨尖Apex ossis sacriに向かって強くけずり出された形である.上端面Facies terminalis cranialisは第5腰椎の下面とほとんど直角をなして結合しているので,この角は岬角Promunturiumと名付けられている.上端面の後方には,すでに述べた上関節突起が出ている.またこの関節突起の前方には上椎切痕がある.

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最終更新日13/02/03

 

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