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一方第11および第12肋骨の軟骨は,腹壁の筋層の間に自由端をもって終わっているので,浮遊弓肋Costae arcuariae fluctuantesという.しかし第10肋骨もしばしば自由端に終わって,10浮遊肋Costa decima fluctuansとなっていることがある(日本人の肋骨の欧米人との比較については喜々津恭胤,人類学雑誌45巻第4付録,1930を参照されたい.).

 各肋骨には骨質の部分すなわち肋硬骨Os costaleと,軟骨の部分すなわち肋軟骨Cartilago costalisとが区別される.

 それぞれの肋硬骨は男性のある締金をなしていて,肋骨小頭の関節面Facies articularis capituli costaeがあって,この面は第2から第10までの肋骨では,横走する1本の隆線すなわち小頭稜Crista capituliによって上下の両部に分けられ,錐体のもつ上下の両部に分けられ,椎体のもつ上下の肋骨窩に接している.しかし第1,第11および第12の肋骨には小頭稜がなく,単一の関節面があるにすぎない.

 小頭の外側には細くくびれた肋骨頚Collum costaeがつづき,後方に突きでた肋骨結節Tuberculum costaeのわきで終わっている.

 大部分の肋骨では,頚の上縁が肋骨頚稜Crista colli costaeという稜線をなしている.肋骨結節のところから肋骨体がはじまる.肋骨結節は,対応する脊椎の横突起の肋骨面と接着するのであって,第1から第10までの肋骨はそのための関節面すなわち肋骨結節の関節面Facies articularis tuberculi costaeをもっている.この関節面の背側にあるザラザラした部分は靱帯の付着するところである.

 肋骨結節の外側で,それまで下外側および後方に向かっていたが肋骨体が,急に方向をかえて前方に向かうので,助骨角Angulus costae, Rippenwinkelという後方の粗な角ができている.肋骨体の下縁は鋭い稜をなし,この稜は頚にまで続いている.肋骨体の内面をみると,その下部に肋骨溝Sulcus costaeがあり,その中を肋間動静脈と同名の神経が走るのである.肋骨の前端は肋軟骨とつながるために,いくらか太くなり,またくぼみができている.

 肋骨は第1から第7または第8へと長さを増してゆき,第8または第9から第12にへと短くなってゆく(喜々津によれば日本人では第6肋骨で弧長が最大となり,以下の肋骨の長さの減り方は欧米人より著しいという.),それで最12肋骨は第1肋骨とくらべてると,いくらか長いことが多くて,またいくらか短いことも少ない.幅は第1肋骨が最も広く,中位の肋骨がこれにつぎ,第12肋骨が最も狭い.肋骨角と肋骨結節との間のへだたりは第2から第11にかけて次第に大きくなる.第1肋骨では肋骨角と肋骨結節は同じところにあり,第12肋骨では両者とも欠けている.

1肋骨(図194)はほかのどの肋骨よりも短くて幅がひろく,かつ強く弯曲している.第1肋骨の2つの面はほとんど正確に上方と下方に向き,その縁は内方と外方とに向かっている.小頭は単一な,すなわち小頭稜のない関節面をもっている.頚は円くて,ほっそりとしている.第1肋骨は第1胸椎だけの椎体および横突起と関節で結合している.第1肋骨の上面には,1つの粗面ないしは低い高まりで分けられた,2つの浅い平滑なへこみがあり,その後方にはさらに大きい粗面があって,中斜角筋の付着部をなしている.前述の2つの浅いへこみのうち後方のものは鎖骨下動脈溝Sulcus arteriae subclaviaeとよばれ,鎖骨下動脈が走るためにできたものであり,前方のものは同名の鎖骨下静脈が走るためにできたものであり,前方のものは同名の鎖骨下静脈が走るためにできたものである.またこれら2つの平滑な部分の間にある粗面ないし隆起は斜角筋結節Tuberculum musculi scaleniとよばれ,前斜角筋の付着するところである.第2肋骨は第1肋骨より長く,その外面には著しい凹凸のある2肋骨粗面Tuberositas costae IIがあって,ここから外側鋸筋のつの巨大な起始尖が起こる.

 11および12肋骨には下縁に肋骨溝がなく,肋骨結節もない.また小頭には小頭稜がなくて,1つの関越面をもつだけである.肋骨角は第11肋骨では,あるかなきかの程度得,第12肋骨では完全に欠けている(図195).

 肋硬骨(図201202)は肋骨小頭から前正中線にいるまで,だんだん下方へ下りながら走っている.この下り方は,小頭と肋骨角との間で一番弱い.肋骨の面の弯曲Flachenkrümmungは肋骨の前部よりも後部の方でいっそう強く,肋骨角のあたりで最もつよい.したがって曲率半径は,後方では側方および前方よりも小さくなっている.

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最終更新日13/02/03

 

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