Band1.167   

 頬骨突起の外方部から側頭線Linea temporalisがはじまって上後方へ弓状に走り,二叉に分かれて頭頂骨へ続いている.

 前頭部の大脳面Facies cerebralisは凹面をなし,脳回圧痕や脳隆起がみられる.その上部中央には矢状溝Sulcus sagittalisという溝が走る.その左右両縁は下方で1本になって稜線をなしてたかまり,これを前頭稜Crista frontalisという.前頭稜は篩骨切痕の近くにまで達するが,ここで2つの小さい接合面に席をゆずっている.この面は篩骨の翼突起と接してこれとともにも盲孔Foramen caecumをかこむためのもである.しかし盲孔が全く前頭骨だけでできていることもある.盲孔は導出静脈の通る孔ではなくて,硬膜の1突起を容れるものなのであるが,前頭骨の鼻棘Spina nasalis ossis frontalis(後述)のあたりにまで伸びて,そこでゆきづまりになっている.矢状溝のそばにやはり脳膜顆粒小窩があり,さらに動静脈溝も存在する.前頭骨の後縁はギザギザしており,左右の頭頂骨との結合面をなすので頭頂縁Margo parietalisと名づけられている.頭頂縁は外側で眼窩部の蝶形[]Margo sphenoideusにひとつづきに移行している.

 眼窩部はほぼ三角形である.内側縁と後縁とは直線をなし,外側縁は弓なりにまがって,いずれも前から後ろへ走っている.

 眼窩面Facies orbitalisは凹面をなしており,頬骨突起のすぐそばに涙腺の眼窩部を容れる涙腺窩Fossa glandulae lacrimalisというくぼみがある.眼窩面の前内側部には,小さいくぼみないし凹凸,あるいは小窩のわきに小さい棘があって,これを滑車小窩Foveola trachlearisおよび滑車棘Spina trochlearisという.滑車棘は上斜筋の滑車が付着するところである.眼窩部の大脳面は円くたかまっていて,脳隆起と脳回圧痕が強くあらわれており,前面および外側へはっきりした境なしに前頭鱗の大脳面に移行している.ギザギザした後縁は蝶形縁Margo sphenoideusとよばれ,蝶形骨の大小両翼の付着するところである.左右の内側縁はその前方にある鼻部とともに篩骨切痕Incisura ethmoidea, Siebbeinausschnittを成し,ここに篩板がはまりこむ.鼻部は前の方に1本のとげのような突起が出ていて,これを前頭骨の鼻棘Spina nasalis ossis frontalis, Nasenfortsatzという.鼻棘は重複していることもある.その前面はザラザラしていて,鼻骨と,上顎骨の前頭突起の一部とがここに接する.

 鼻棘の後面には篩骨の正中板の前縁がささえられているが,時にまた篩骨洞の前方のものもここに付着する.鼻棘の上をおおって鼻縁Margo nasalisというギザギザした半月形の面があり,ここに鼻骨の上端と上顎骨の前頭突起の上端が接する.この上顎骨の付着する所のうしろで鼻部の面は深く落ち込んでいて,多少とも著明な空所がそこにある.これが前頭洞Sinus fronalisで,前頭洞口Apertura sinus fronalisによって鼻腔に開口する.

 左右の前頭洞は,前頭洞中隔Septum sinuum fronaliumという,多くの倍薄い隔壁でわけられており,その形と広さとは同一の頭蓋においてすらもずいぶん異なっている.この中隔はどちらか1側へおしやられていることも,斜めになっていることもあるが,その下端部は常に正中線上にある.

 さらに後方の前頭骨の部分は,くぼみの多い,小室に分かれた様相を示しており,それが前頭洞の入口に近づくほど著しくなるので,前頭洞そのものがこのような小室の大きくなったものとみなされるのである.

 前頭洞と関係しているほかの骨については,まず左右の篩骨迷路を挙げねばならない.篩骨迷路の天井は眼窩部の内側部でつくられている.次には篩骨の眼窩板(紙様板)と上顎骨の前頭突起との間にはさまっている涙骨が挙げられる.眼窩板と結合している部分には各篩骨洞の頂の部分を成す篩骨小窩Foveolae ethmoideaeがならんでいる.なおここには2つの切痕があって,眼窩板の接着によってそれぞれ孔になっている.

S.167   

最終更新日13/02/03

 

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