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また縦走する粗な2本の溝は,翼状突起の内外両側板のデコボコした前縁をうけている.それで上述の浅いくぼみは翼突窩の底の一部をなすわけである.下の方,口蓋飯のすぐわきに(たいてい2つの)小さい孔がある.これは小口蓋孔Foramina palatina minoraと呼ばれ,翼口蓋管から発する口蓋管Canales palatiniという細い管の開口である.そのうち外側の小さい方のものは存在が不定である.小口蓋孔のすぐ前には翼口蓋管じしんの大きい下口があって,大口蓋孔Foramen palatinum majusとよばれる.これは裂隙状をなしていることも,円い孔のこともある.

 上顎板の前部には前上方に角笛のような形の眼窩突起Processus orbitalisという突起が出ており,これは中空になっていることが多い.

 眼窩突起は少くとも5面をもっている.そのうち上面と内側面とが自由面をなし,前者は眼窩底の後内側隅をつくっており,後者は翼口蓋窩に面している.次に他の骨と接合する面としては,前面は上顎骨に,内側面は篩骨に,後面は最も小さくて蝶形骨甲介に結合している.この突起の基部にあたって,その内面に沿って1本の鋭い隆起線が水平方向に走っている.これが篩骨稜Crista ethmoideaで,中鼻甲介の後端が付着するところである.

 上顎板の後部から蝶形骨突起Processus sphenoideusという板状の突起が後上内側方へ向って伸び,蝶形骨の体と翼状突起の内側板の基部とに接している.またその自由面は一部鼻腔に面し,一部翼口蓋窩の底の形成に参加している.内側端はときに鋤骨にまで伸びている.

 これらの2つの上方の突起は翼口蓋切痕lncisura pterygopalatinaという深い切れこみによってたがいに分けられている.この切痕は蝶形骨体によってせばめられて翼口蓋孔Foramen pterygopalatinumという翼口蓋窩から鼻腔に通じる重要な孔をつくっている.

 Elze, C., Zur Anatomie des Gaumenbeines. Z. Morph. Anthrop.,15. Bd.,1903.

γ)頬骨Os zygomaticum, Joch-od. Wangenbein. (図252, 253, 273, 274)

 頬骨は頬の最も突出した部分をつくるとともに,側頭骨から上顎骨および前頭骨にのびる弓状部を閉じて,これを完全にしている.この骨性の弓は頬骨弓Arcus zygomaticus, Jochbogenとよばれ, 先ず第一に強大な咬筋の起始するところとなっている.頬骨は不規則な四角形の扁平な骨で,その主要面をなす頬面Facies malarisは前外側方へ向っている.頬骨の眼窩面Facies orbitalisは弧をえがいてへこんでおり,眼窩の周壁の形成に参加している.後面は側頭面Facies temporalisで,へこんでおり,側頭窩を前方で境している.

 頬骨はギザギザした三角形の幅の広い上顎突起Processus maxillarisによって上顎骨の頬骨突起と結合し,幅がせまいが頑丈な側頭突起Processus temporalisによって側頭骨の頬骨突起と結合し,上方の力づよい前頭蝶[]骨突起Processus frontosphenoideusによって前頭骨および蝶形骨大翼と結合している.

 頬骨は頬骨管Canalis zygomaticusという1つの管で貫かれている.この管は眼窩において,上顎骨との縫合のところ,あるいはその近くで頬骨眼窩孔Foramen zygomaticoorbitaleにはじまり,骨の内部で2枝に分れる.その1つは頬骨面に開いて頬骨顔面孔Foramen zygomaticofacialeとよばれ,もう1つは側頭面に開口して頬骨側頭孔Foramen zygomaticotemporaleという.

 しばしば頬骨管が単一でなくて,その2枝が独立して眼窩にはじまることがある.頬骨管およびその枝の中には同名の神経すなわち三叉神経第2枝の枝が走っている.――前頭蝶形骨突起は縫合によって,下方のそれより大きい部分から分離していることがある.ちなみに,この突起は霊長類ではじめて形成されるもので,それより下等の動物には欠けているという事実が注目に価する.そのほか,また別に頬骨下縁の近くにこれと平行して横走する分離もあらわれる.――頬骨の上顎骨と付着する部分は,上顎洞からつづいて空洞化されることがある.この場合は上顎洞の頬骨陥凹Recessus zygomaticusが頬骨じしんにまで達している状態といえるのである.

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最終更新日13/02/03

 

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