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鎖骨の胸骨関節面は鞍形で,胸骨の鎖骨切痕の関節面から前方・上方および後方にはみ出ている.鎖骨切痕の関節面も同様に鞍形で後方に向いている.両関節面は線維軟骨で被われており,その厚さは胸骨の関節窩では一様で1~1.5 mm,鎖骨では不均等で上内側部で2.5mm, 下外側部で0.5 mmある.

 関節包はゆるくて,厚く丈夫である.そして前下方の隅を除いてほとんどどこでも特別の線維束で補強されている.

 特別の装置として,ぐるりと全周で関節包と癒着した線維軟骨性の関節円板がある.これは両関節面の形の不一致を均らすとともに,関節腔を2室に分けている.

 関節円板はしばしば明瞭に一面が凸, 他面が凹の弯曲を示すが,またしばしば不規則な形の板をなすこともある.,一番厚いところは後上部(3~5mm)で,ここは鎖骨の関節軟骨も最も厚い場所に当っている.

 この場所では3つの軟骨層(鎖骨および胸骨の関節軟骨と関節円板)の全体の厚さが13mmにも達することがある.このクッションの層が腕のはたらきに対して大きな意義をもつことは,説明するまでもなく明かであろう.

[図408] 鎖骨・胸骨・第1肋骨のあいだの靱帯 前面(4/5)

 補強靱帯胸鎖靱帯Lig. sternocIaviculare,鎖骨間靱帯Lig. interclaviculare,肋鎖靱帯Lig. costoclaviculareである.

 胸鎖靱帯は関節包の前面を被い.鎖骨の胸骨端から起って胸骨に付く.鎖骨間靱帯は鎖骨端から起って,胸骨に付く.鎖骨間靱帯は鎖骨の内側端の上縁から起って,他側の鎖骨の同じ場所に終る.肋鎖靱帯は鎖骨の上縁から第1肋軟骨にいたる強い線維束である.

 力学:この関節では全く任意の運動が可能である.すなわち関節の中央を通る無数の軸を中心にして運動しうるのである.強いて名づけるならば,不正球関節とでもいうべきものである.ただ生体でこの関節において特定な回旋運動だけを意識的に行なうことは不可能である(R. Fick).

 胸鎖関節の血管は内胸動静脈から来る.また神経は内側の2つの鎖骨上神経から来る.

 c)上肢帯の各骨のあいだの結合は肩鎖関節Articulus acromioclavicularis, Schultereckgelenkである(図411,413).この関節をつくる骨は肩甲骨と鎖骨である.

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最終更新日13/02/03

 

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