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 筋肉は血管を非常に豊富にもっているが,それとちょうど反対に腱では血管が乏しく,とくにその深部では非常に少く,小さい腱ではその内部に全く血管を欠くものがある.しかし腱の周囲を包んでいる結合組織の中には血管があって,これは網目の大きい毛細血管網をなしている.

 筋のリンパ管Lymphgefäßeはわずかではあるが,血管に伴ってみられている.比較的豊富なリンパ管が腱ならびに筋膜の表面やそれらの深部に証明されている.

 Aagard(Anat. Hefte 1913)は人について,筋のリンパ管を研究した.彼によれば人の骨格筋にははなはだ豊富なリンパ管があるという1そして細いリンパ毛細管およびリンパ管叢は小さい血管に接して存在し,次いでそれらが集まって大きい血管に沿って更に大きいリンパ管の幹および叢をつくっている.四肢の筋では,このリンパ管叢はなお筋の内部にある腱の部分にとってのリンパの流出路をなしており,舌の中では,同時に粘膜から出てくるリンパの流出する路である.血管のそばを通って,更に太いリンパ管がその領域リンパ節に達する.

5.筋の作用Funktioin der Muskeln

 筋の作用は個々の筋線維のはたらきをよく考えてみれば明かである.筋線維の収縮によって隔たった2点が相近ずくこともあり,また近くにある2点がたがいに遠ざかることもある.

 一つの筋がその起始するところおよび停止するところに作用するは,筋を組み立てている個々の筋線維全部の力の現われの総計である.その効力が発揮される方向は個々の筋線維の全部が引く方向を合計したものである.

 筋の活動を1つの自由関節にみられる3つの主軸に対する関係においてしらべると,全体として次の種類の筋群が区別できる,すなわち屈筋BeugerあるいはFlexoren,伸筋StreckerあるいはExtensoren,内転筋AnzieherあるいはAdduktoren,外転筋AbxieherおよびAbduktoren,回転筋Dreherおよび回後筋Zurückdreherあるいは回旋筋Rotatorenである.

 なお骨の運動をつかさどつてはいるが,しかし関節の軸というものに係わりのない場合の筋の一団があり,また軟部組織を動かしあるいは単に自分だけを動かすはたらきをもつような別の一団があるので,上述の筋群のほかになおいくつかの別の種類があるわけである,すなわち括約筋SchließerあるいはSphinkteren,散大筋ErxveitererあるいはDilatatoren,下制筋HerabzieherあるいはDepressoren,圧縮筋ZusammenpreffrあるいはKompressoren,挙筋HeberあるいはLewvatoren,張筋SpannerあるいはTensorenである.

 数多くの筋はふた通り以上の作用たとえば回転と屈曲の作用を受持つことができるように配列されている,つまり円回内筋は視骨を回内するが,しかし同時にこの筋は前腕の屈筋の1つでもある.上腕二頭筋は前腕を屈し,その上に前腕を回外する.いくつかの作用の中の1つが他の作用に対して目だたない場合には,それは主作用に対する副作用というのである.

 また1つの筋の前方部が後方部とは違った作用をする,あるいはその筋全体がはたらくときとは別のはたらきをなすことがある.例:中臀筋.この意味においても1つの筋がいろいろ違った作用をするといえる.

 筋の作用は,その筋のはたらきをうける体肢の位置の変化如何によっても変りうるのである.それゆえ或る屈筋が回転筋として作用することがある.左右対称的にある体幹筋では,1側性の筋活動が両側性のものに移ってゆけば当然その作用が変る.

 たがいにその活動を助け合っている筋は共同筋SociiあるいはSornergetenと呼ばれ;その活動がたがいに相反している筋は拮抗筋Antagonistenである.--それについての詳しいことは筋学各論のなかで述べる.

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最終更新日13/02/03

 

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