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 頭最長筋は荊述の筋(胸および頚最長筋)としばしば密に融合して,最上部3~5個の胸椎の横突起,および最下部3個あるいは4個の頚椎の肋横突起および関節突起からはじまり,薄い筋となって乳様突起の後縁で頭板状筋の外側部のすぐそばに付着している.

 変異(日本人の頭最長筋につき,M. atlantomastoideusの名で総括でぎる1群の筋束が・54体のうち14体(24%),19側に認められた(進藤篤一:医学研究,12巻,2223~2233,1938).):頭最長筋が全く欠けていることがある.しばしばこの筋に1~2個の腱画がある.起始尖頭の数は普通より少ないこともあるが,しかしまた第8胸椎にまで及んでいることがある.過剰筋束として,第5頚椎以下の肋横突起~第2胸椎までの横突起から起り,環椎の肋横突起,ならびに乳様突起に付着しているものがみられ,る.これをM. transversalis cervicis minor(W. Krause)という.

 神経支配:脊髄神経の後枝による.

 脊髄節との関係:頭最長筋,C.1~III(IV),胸および頚最長筋,C. (III)IV~L. V.

仙棘筋の 作用:両側性にはたらくときには脊柱および頭を後方に曲げ,肋骨を下方に引く.

 一側性に作用するときは,最長筋が頭部,頚部などを側方に傾け,且つ回転することにあずかる.

3. 棘筋M. spinalis. (図484, 485)

 この筋は棘突起からおこり,棘突起におわる.起始では最長筋と,停止では半棘筋および多裂筋と結合している.最上部2個の腰椎の棘突起および最下部2個の胸椎の棘突起からでる腱条から起る.しばしばごく細い1本の腱が第10胸椎の棘突起からきて加わる,棘筋は第(1)2~第8(9)胸椎の棘突起に達する.

 神経支配:脊髄神経後枝の内側枝による.

 作用:一側性にはたらくときは脊柱を側方に曲げることにあずかる.両側性にはたらくときは脊柱を伸ばす.

4. 半棘筋M. semispinalis. (図484, 485)

 脊椎骨の横突起からおこり棘突起におわる筋で,第1~第11胸椎の横突起から起り,第1~第4胸椎および第6と第7頚椎の棘突起に終る.

 神経支配:脊髄神経後枝の内側枝による.

5. 横突後頭筋M. transversooccipitalis. (図484, 485)

 この筋は第1~第7胸椎の横突起および第7頚椎の肋横突起から,ならびに第3~第6頚椎の関節突起および関節包靱帯からおこり,分界項線と項平面線とのあいだに付着している.この筋の上部に多くのばあい横走する1つの中間腱がみられる.

 神経支配:脊髄神経後枝の内側枝および外側枝による.

 脊髄節との関係:C. I~VIII(W. Krause).C.1~IV(Eisler).

 作用:半棘筋は1側だけではたらくと脊柱を反対側に回し,両側の筋が同時にはたらくと脊柱が伸ばされる.横突後頭筋は1側だけのはたらきで頭を反対側に回し,左右の筋が同時にはたらくと頭を後方に曲げるのである.

 変異:横突後頭筋の中間腱は欠けていることがあり,あるいはそれが1つでなくて2つみられることもある.

6. 多裂筋M. multifidus. (図485, 487)

 この筋は横突棘突筋系transverso-spinales Systemの強大な第2層をなしている.半棘筋が存在する範囲では,この半棘筋が横突棘突筋系の浅層を成して多裂筋を被っている.多裂筋はいっそうゆるやかな傾斜をして走ることによって半棘筋と区別され,仙骨の後面から軸椎にまで延びている.これは羽を組み合せたような構造になっている.

 仙腰部は第4仙骨孔までの仙骨後面, 腸骨稜の後部および胸最長筋の腱膜の1条, 腰椎の乳頭突起から豊富な筋東をもって起りこの筋の最も筋肉質に富む部分を成しているが,他方多裂筋の胸部および頚部では腱性の成分が著しく多い.

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最終更新日13/02/03

 

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