Band1.366   

 神経支配:S. IV, Vによる(Eisler).

 尾骨筋M. coccygicus. すなわち尾骨外転筋M. abductor coccygisは扁平な四角形の筋である.この筋は腱性の束をまじって坐骨棘から起り,扇形に広がって仙骨と尾骨の外側縁に付着している.

 神経支配:陰部神経叢から,.

 脊髄節との関係:S. (II)III, IV(V) (Eisler).

第2群:腹筋Mm. abdominis

a) 前腹筋ventrale Bauchmuskeln

 前腹壁および側腹壁の筋肉は斜走,横走および縦走するもの,すなわち腹直筋,錐体筋,内と外の両腹斜筋,腹横筋からなっている.側腹壁から起って斜走する筋と横走する筋とは幅の広い腹筋breite Bauchmuskelnといわれる.幅の広い腹筋はやはり幅の広い終止腱,すなわち腱膜Aponezarosenに移行し,この腱膜は長い筋に対して鞘を作り,前正中線で相合している.前正中線で相合するところに縦走する腱性の索ができていて,白線Linea alba, weiße Bauchlinieとよばれ,これは剣状突起から恥骨結合に延びていて,腋のところでは瘢痕形成によって閉ざされた臍輪Anulus umbilicalis. Nabelringをもっている.

α. 腹部の縦走筋Gerade Bauchmuskeln
1. 腹直筋M. rectus abdominis, gerader Bauchmuskel. (図490, 492, 499502)

 この筋は3つの尖頭をもって第5~第7肋軟骨,剣状突起および肋剣靱帯から起り,下方に向って幅が狭くなり,特に下方1/4ではその幅が狭くて,短い強い終腱をもって恥骨結合と恥骨結節とのあいだで恥骨の上縁に付着している.

 腹直筋の筋線維の集団のなかに3本あるいはそれ以上の腱性の横条,すなわち腱画Inscriptiones tendineaeがあって,これは腹直筋を表面的にあるいはずっと深い所まで4~5個の筋腹(筋節Segmente)に分けている.腱画のうちの2本は臍よりも上方にあり,1本は臍よりも下方にあるが,これはしばしば欠けている.もう1つはちょうど騰の高さにある.腱画は腹直筋鞘の前葉と密に着いている.

 神経支配:肋間神経(VI)VII~XII(L I) (Eisler).

 脊髄節との関係:Th. (VI)VII~XII(L.1).

 作用:骨盤を固定しているときには胸郭を下方に引き,脊柱を曲げる.胸郭を固定しているときには骨盤を引きあげる.

 変異:この筋は完全に欠けていることがあり,またその幅がまちまちである.その起始は第4,第3,第2肋骨にまで,さらに鎖骨にまでも達することがある;胸骨あるいは白線からの副起始accessrische Ursprüngeがみられている.なお細い筋束あるいは腱条によって小胸筋と合していることがある.腱画Inscriptiones tendineaeはその数,位置,経過,方向および長さは種々様々であって,これは分節構造の現われである.まれにはこの筋の起始がさらに上方に延びて,第4さらに第3肋骨にまで及んでいることがある.--ごくまれに腹外側直筋M. rectus lateralis abdominisというのがみられる.これは第10(第11,第12)肋骨から内,外両腹斜筋のあいだをへて,腸骨稜に向っている(W. Krause).

2. 錐体筋M. pyraInidalis. Pyramidenmuskel. (図492)

 小さい筋で,腹直筋の停止部の前で,恥骨から幅広くはじまり,腹直筋鞘前葉のうしろで白線のそばにあり,上方に向って次第に尖り白線に停止する.

日本人における錐体筋の欠如は成人において両側欠如153体のうち5体(森田),100体のうち5体(河合),77体のうち5体(松島),1側欠如は148体のうち5体(森田),100体のうち4体(河合),77体のうち2体(松島)である(松島伯一:実地医家と臨床, 4巻, 750,1927. ;河合松尾:解剖学雑誌,9巻,182~197,1936. ;森田信:医学研究,14巻,933~946,1940).

 九州人では60体中錐体筋の存在するもの96.7±1.72%である (中村盛三=熊本医学会雑誌,11巻,1251~1261,1935).

S.366   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る