歴史的な偉大な解剖学書
感覚器の項参照.
この筋は頬骨弓の下で下顎枝を被っていて,上顎骨の頬骨突起,頬骨の下縁,側頭骨の頬骨突起,頬骨および頬骨弓の内側面からはじまる.
この筋には浅層と深層の2つの部分があって,その深層の部分は後上方では外方にあらわれている.その前縁では深,浅の両部分が合しており,またうしろから両部分のあいだに,深いポケットのようにはいりこむことができる.その浅層の部分には幅の広い腱が1つあって,これはずっと下まで達している.
この筋は斜めに後下方に走り,下顎枝の外面と咬筋粗面とに固着する.その前縁をなす筋束は斜め前方に向う.しばしばこの筋の線維が下顎骨の下縁を越えて延び,内側翼突筋の浅層の線維と合している.
変異:この筋の深と浅の両部分が,ときに独立している.側頭下顎靱帯に,あるいは頬骨に,あるいは上顎骨にはじまる筋束が現われることがあって,これらが揃つているとM. masseter trigastricus(W. Gruber) (三腹咬筋)ということになる.側頭筋や頬筋との結合がみられている.
深,浅両部分はいずれも,内部が非常にこみ入つた小さい羽のようになっていて,そのためにこの筋の力および仕事の能力が著しく高められている,H. Ebert, Z. Anat. Entw.,109. Bd.,1939.
[図520]下顎骨の外面における筋の起始と停止 (H. Virchowによる).
[図521]上顎骨の内面における筋の起始と停止 (H. Virchowによる).
この筋は扇形をしていて,側頭窩の大部分を満たしている.その起始をなすのは側頭平面および側頭筋膜である.筋線維は下方に向って集まって,1つの平たい力つよい腱となる.この腱は下顎骨の筋突起を取り囲んでここに固着している.
最終更新日13/02/03