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 変異:この筋の起りは,頭頂部を上方にのびて多少の差はあるが,かなりの距離だけ上方に達している.ふつうに咬筋と続き,またしばしば外側翼突筋と結合している.

3. 外側翼突筋M. pterygoideus lateralis. (図519521)

 この筋は下顎枝の内側で,側頭下窩にあって,翼状突起の外側板の外面および側頭下稜から起る.その腱は翼突窩に付着し,さらに顎関節の関節包および関節円板にも固着している.

 変異:この筋の上方の頭は独立することがあり,あるいは側頭筋と結合していることがある.

4. 内側翼突筋M. pterygoideus medialis. (図486, 519, 521)

 この筋は翼突窩の面および縁ならびに上顎骨のこれに隣接する小部分および翼状突起の外側板の下端の外面からおこる.そして下後方に走って,下顎骨の翼突筋粗面に達している.

 神経支配:咀嚼筋はみな三叉神経の第3枝によって支配される.

 作用:咬筋,側頭筋および内側翼突筋の両側性の活動によって,下顎体が上顎骨に引きつけられ,従って顎を閉じるようにはたらく.外側翼突筋が両側性にはたらくと,下顎は前方に押しだされる.前方に押し出された下顎は側頭筋の後部のはたらきによって引きもどされる.下顎骨の下方への運動(顎を開くこと)はいずれの咀嚼筋のはたらきにもよらず,下顎の下方にある諸筋とくに顎二腹筋およびオトガイ舌骨筋のはたらきによるのである.

 翼突筋群の一側性の活動によって,下顎骨は一方の関節頭の周りを廻って磨臼運動をする.

 咀嚼筋の年令差についてはBluntscheliとSchreiberとがFortschr. Zahnheilk., V,1929の中に述べている.

b)舌骨上筋群kraniale Zungenbeinmuskeln
1. 顎二腹筋M. biventer mandibulae. (図485, 506, 508, 519, 521)

(日本人の顎二腹筋の変異を進藤は130体のうち約67%に認め,これを分類している(進藤篤一:九大医報,291~292,1932;解剖学雑誌,8巻,47~48,1935).また山田はこの筋の変異を6型に分類し,そのうち起始型(24.6%)が最も多いという(山田迪:解剖学雑誌,8巻,303~318,1935).)

 この筋は2つの筋腹をもち,その後腹Venter mastoideus, Warzenbauchは乳突切痕にはじまり,胸鎖乳突筋に被われて前下方にすすみ,舌骨の大角の上を走る強い円柱状の腱に移行して,ここで前腹Venter mandibularis, Unterkieferbauchに続いている.前腹は下顎骨の二腹筋窩にはじまる.前後両腹のあいだの中間腱は1つの線維性の条によって舌骨にしっかりとおさえとめられている.この筋は全体として弓状を画いて顎下腺を抱く形をしている.

 神経支配:後腹は顔面神経の二腹筋枝により,また前腹は三叉神経の第3枝からくる顎舌骨筋神経によって支配される.

 作用:この筋は舌骨を引きあげ,あるいは下顎骨を引き下げる.

 変異:前腹が欠けていることがある.そのさい後腹はその本来の位置を保っており,あるいはその停止が下顎枝にみられる.前後両腹のいずれか一方が重複していることがある.両側の顎二腹筋の前腹は多数の筋束を交換してたがいに癒合している.その中間腱を舌骨に付着させている線維性の条のかわりに,しばしば1つのわなが存在する.後腹の中にLe Doubleが時として腱画をみている.M. occipitohyoideus(後頭舌骨筋)という副筋束がしばしばあって,これは分界項線から,あるいはこれと乳様突起とから起って,顎二腹筋の後腹に移行している.

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最終更新日13/02/03

 

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