歴史的な偉大な解剖学書
帽状腱膜の側頭部の最も下方で内側の突出部がこの浅板と続くが,この腱膜の外側の線維束は皮下の結合組織の中で消失している.側頭筋膜の内面から側頭筋の一部が起っている.
この筋膜は頬骨弓から下方に延びて,耳下腺の外面を被い,また咬筋膜Fascia massetericaとして咬筋を被っている.この筋膜は背方では側頭骨の乳様突起および外耳の軟骨と結合し,下方では頚筋膜の浅葉に移行し,また咬筋の前では咽頭頬筋膜と合している.
咽頭頬筋膜は頬筋の外面を被い,前方では口角で頬部の皮膚の結合組織に移行し,頬筋の後方の境では頬咽頭縫線と合し,ここから頭咽頭筋の外面およびその他の咽頭括約筋の上に続いている.咬筋の前方部と頬筋との間にあるへこみは円みを帯びた脂肪のかたまり,すなわち頬脂肪体Corpus adiposum buccae, Saugpolster(ビシャー脂肪塊Bichatsche Fettklumpen)で満たされている.この脂肪体は個々,の咀嚼筋の間にかなりの広さに入りこんでいて,高度にやせている人でも決してその全部が消失するものではない(図515, 516).
体肢の筋は全部合せても,いままでに述べた2大筋群,すなわち背方群と腹方群に対して同列におくべき特別な部分をなしているのではない.それらはむしろ大きな腹方の筋団ventraler Muskellagerの一部であるに過ぎない.つまり腹方の筋は体幹Stammの筋団と体肢Extremitätenの筋団とに分れるのである.
上肢を動かす筋の一部はすでに背部および胸部の筋の項で述べてある(352, 379頁).それゆえここでは体幹から起っているものを除いた他の数多くの筋についてしちべてみよう.
(日本人の三角筋について古泉は100肢を調査し,これを鎖骨部,肩峰部,肩甲棘部の3部に区別し,後2者の分離率は78%,前2者の分離率は57%であるという(古泉光一:日本医科大学雑誌,5巻,1063~1083,1934).)
この筋は鎖骨の外側1/3から,および肩峰と肩甲棘では僧帽筋の停止する線に対するところから起って,上腕骨の三角筋粗面に停止している.
鎖骨および肩峰における起始は大体において筋性である.しかし肩甲棘ではその起始は腱性であり,しかも腱線維は内側のものほどいっそう長くなり,多少の差はあるが棘下筋膜と固く結合している.
その筋束は粗大で,この筋の停止に向って独特なくくあいに走って集中するが,それは幾重にも羽毛状になっているのである.その力つよい終腱は特にこの筋の内面でよく発達している.
この筋と上腕骨大結節との間には大きい粘液嚢,すなわち三角筋下嚢Bursa subdeltoideaがあって,これは多くは肩峰下包Bursa subacromialisと続いている(図531).
最終更新日13/02/03