歴史的な偉大な解剖学書
縫工筋の終腱と大腿薄筋および半腱様筋の終腱とのあいだには固有縫工筋包Bursa m. sartorii propriaという1つの粘液嚢がある.縫工筋と長内転筋と鼡径靱帯とのあいだにある部分は大腿三角Trigonum femoraleと名づけられている.
縫工筋は長内転筋と内側広筋とのあいだの溝を前方から被っていて,これら両筋とともに1つの管を形成している.この管は下方では内転筋管 Canalis adductoriusに続き,この管と同じように大腿動静脈ならびに伏在神経を有っている.
神経支配:大腿神経による.
脊髄節との関係:L. II, III.
作用:大腿を前方に挙げ,これを外転し且ついくらか外方に回す.また下腿を内転し,膝を曲げているときには下腿を内方に回す.また伸した膝を固定するのにあずかっている.
変異:完全に欠如していることがあり,重複していることもある.ぎわめてまれにこの筋全体の長さの中央部に1つの腱画をもつことがある.程度のよわい異常が起始と停止にみられる.
2. 大腿四頭筋M. quadriceps femoris, Schenfeelstrecker
この筋には次の4頭がある.すなわち
a)大腿直筋M. rectus femoris. (図562, 563, 569)
この筋はまっすぐな(直接的な)腱をもって腸骨結節から起り,第2の同様に強い横走する腱をもって寛骨臼の上方にある粗な表面のへこみから起っている(図438).その線維束は下方にすすんで膝蓋骨の上方で終腱に移行し,この終腱はほかの3つの頭の終腱と合するのである.
作用:大腿を前方に挙上し,且つ下腿を伸ばす.
横走する腱と骨とのあいだに1つの粘液嚢がある.
これが大腿直筋嚢Bursa m. recti femorisである.
b)内側広筋M. vastus tibialis. (図562, 563, 565~568)
転子間線の下部および大腿骨稜の内側唇の全部から起る.
c)外側広筋M. vastus fibularis. (図562, 563, 565~568, 572)
大転子の基部および大腿骨稜の腓側唇の大部分から起る.
大転子の外側面には皮膚のすぐ下に大転子皮下包Bursa trochanterica subcutaneaがある.
d)中間広筋M. vastus intermedius. (図565~567)
その起始は大腿骨の前面であって,上の方へは転子間線に達していることがある.下方の筋束が膝関節筋M. articularis genusとして大腿骨に接着していて,この筋束は膝関節包の近位面に達して,ここに停止し,この関節包を緊張させる(図574).
発達が比較的弱いときには中間広筋の上部は脛側,腓側両広筋のあいだに現われることがなくて,全くこれらのあいだのところに閉じこめられている.
これらの4頭が共通にもつ終腱の一部は膝蓋骨の底に,一部はその側縁に固着している.その他の線維束は膝蓋骨の前面を越えて下行する了この線維は膝蓋骨より下方ではこの骨によって中断された線維といっしょになり膝蓋靱帯Lig. patellaeを成していて,この靱帯は力つよい終腱の続きとして脛骨粗面に停止するのである.それゆえ膝蓋骨はこの終腱の種子骨と考えられる.
この共通の終腱のうしろには膝蓋骨の上方に膝上嚢Bursa suprapatellaris(図450)という粘液嚢があり,これはほとんど常に膝関節の関節腔と交通している.もう1つの粘液嚢が脛骨と終腱とのあいだにあって,これが膝下靱帯下嚢Bursa infrapatellaris profundaである(図448, 449, 451).膝蓋骨の前には次の3つの粘液嚢がある,すなわち膝前皮下包Bursa praepatellaris subcutanea,膝前筋膜下嚢Bursa praepatellaris subfascialis,膝前腱膜下嚢Bursa praepatellaris subAponeuroticaであって,第1のものは皮膚のすぐ下に,第2のものは筋膜の下に,第3のものは骨の前面のすぐ前にある.
最終更新日13/02/03