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この腱は母指の指背腱膜に移行して,その末節骨の底に終っている(図581)(日本人において長母指伸筋の停止腱に副腱束の出現する頻度は204体側のうち203体側(99.5%).もっともその発達の弱いものがはなはだ多い(河合松尾:解剖学雑誌,8巻,261~269,1935).).

 この筋の上部は下腿の表層に達していないで,深いところにかくれており,前脛骨筋および長指伸筋に被われている.

 神経支配:深腓骨神経による.

 脊髄節との関係:L. IV, V(S.1).

 作用:この筋は母指を伸ばし,これを高く挙げて足の背屈を助ける.足を固定しているときには下腿を前方に曲げることにあずかる.

 変異:この腱は(まれに)第1中足骨に1つの腱束を送っている.ときとしてこの腱束の代りにM. extensor hallucis longus accessorius(副長母指伸筋)とよばれる筋束が存在する.この過剰筋束が前脛骨筋からあるいは長指伸筋から出ていることがある.

3. 長指伸筋M. extensor digitorum longus. (図573, 574, 581)

 この筋は脛骨の上部から起るが,ここでは前下腿筋間中隔Septum intermusculare cruris anteriusがこの筋と前脛骨筋とを分けている.さらにこの筋は腓骨の前稜,下腿骨間膜および下腿筋膜からも起っている.長指伸筋の前縁にそってまず単一の腱が現れるが,これは十字靱帯より上方で4本の腱に分れてそれぞれ第2~第5指にゆくのである.これら4本の腱は十字靱帯の下で外側の管を長指伸筋腱鞘Vaginae tendinum m. extensoris digitorum[pedis]longiに包まれて通りぬけ,その先きは第2~第5指の指背腱膜に移行する.

 第3腓骨筋M. fibularis tertius:長指伸筋の腱のほかになお5番目の腱が存在すると. きには,これは第4・第5両中足骨の底の背面に達している(図573, 581).この腱に属する筋肉部は長指伸筋の筋腹からはまったく離れていることがあるので,そのときは第3腓骨筋M. fibularis tertiusという特別の筋となっている.これが離れていないで結合していることがいっそう多いが,そのときにもこの名で呼ばれている.しばしば1つの腱束が第5指の指背腱膜に達している.

 足の指背腱膜DorsalAponeurose der Zehenは個々の点では手のそれと同じ関係を示す.すなわちおのおのの足指で伸筋腱の2つの両側の束は末節骨の底にまで達し,中央の1つは中節骨の底にまで達する(図581).

 神経支配:深腓骨神経による.

 脊髄節との関係:L. IV, V, S. I.

 作用:この筋は第2~第5指を伸ばし,これらを高く挙げ,足の背屈作用にあずかる.足を固定しているときには下腿を前方に曲げるのを助ける.

 変異:長指伸筋:この筋の1つあるいはそれ以上の腱が2重になっていることがある,その2つの腱のうち1つは通常の停止をもち,他の1つはそれと同じ停止をすることもあり,また隣接する指か,中足骨の1つか,短指伸筋の1つの腱か,あるいは他の足背の場所に停止することもある.きわめてまれに母指に達する腱がみられる.まれにこれらの腱が手背における腱のようにたがいに合していることがある.筋がおのおのの足指に相応した別々の筋腹に分れていることはまれである.

 3腓骨筋(第3腓骨筋の欠如は日本人154体側のうち13体側(8.4%) (松島).44体側のうち3体側(6,8%) (保志場),982体側のうち45体側(416%) (日本人について保志場がまとめたもの)である(松島伯一:実地医家と臨床,4巻,67~69,750,1927;保志場守一:金沢医科大学解剖学教室業績,29巻,119~121,1938;栃原潤,小野沢武男:解剖学雑誌,5巻,589~600,1932).)はSchwalbeおよびPfitznerによれば8.2%に欠如するという.その停止腱はしばしば分岐し,その腱束の1つは通常の場所に,他のものは第5指,第4中足骨底およびその他の近くの場所に達している.第3腓骨筋は類人猿より下等な猿にみられるM. peronaeus parvus(小腓骨筋)と相同のものである.

β. 外側の筋群すなわち腓骨筋群laterale oder Fibularisgruppe

1. 長腓骨筋M. fibularis longus. (図573, 579, 590)

 この筋は腓骨小頭および腓骨体の一部から起り,後下腿筋間中隔Septum intermusculare cruris posteriusによって長指伸筋から分けられている.その腱ははじめ短腓骨筋の腱の表層にあり,下腿の下1/3では後者を被っている.腓骨踝の高さでこの腱は短腓骨筋の腱のうしろにあり,腓骨踝溝の中ではこれといっしょになり,そこでは上腓骨筋支帯Retinaculum tendinum mm. fibularium proximale(図573)によってしっかりと保持されている.それに続いて長腓骨筋の腱は弓なりに向きを変えて踵骨の外側面に達し(図460, 463, 464),ここでは滑車突起の下にあって下腓骨筋支帯Retinaculum tendinum mm. fibularium distaleによりしっかりと保持されている(図573).

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最終更新日13/02/03

 

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