Band1.473   

この腱が腓骨踝のうしろを走る部分にも,またごくまれには踵骨の滑車突起に沿って走る部分にも種子軟骨が1つみられることがある.第3,第4中足骨に向う腱条があることはいっそうまれである.M. fibularis accessorius(副腓骨筋)という過剰筋頭が長,短の両腓骨筋のあいだで腓骨から起って,その腱は長腓骨筋の腱に移行している.

2. 短腓骨筋M. fibularis brevis. (図573, 579582, 584)

 この筋は腓骨の下半部の外面に始まり,長腓骨筋に被われている.その腱は腓骨と長腓骨筋の腱とのあいだにあって,しかも下腿の下1/3では長腓骨筋の腱の内側にあるが,腓骨踝ではその前にある,その腱は腓骨課溝のなかを通り,ここでは上腓骨筋支帯Retinaculum tendinum mm. fibularium proximaleによりしっかりと保持され,総腓骨筋腱鞘Vagina tendinum mm. fibularium communisに包まれている.次いで踵骨の外側面に達し,ここでは滑車突起の上方にあり,下腓骨筋支帯Retinaculum tendinum mm. fibularium distaleによりしっかりと保持され,第5中足骨粗面に終っている(図581, 582).それから分れた1つの腱束が第5指の指背腱膜に達していることがある.

 神経支配:浅腓骨神経による.

 脊髄節との関係:L. V, S. I.

 作用:足の外側縁を上方に挙げ,足の底屈のときを助け,足を固定しているときには下腿をうしろに引く.

 変異:その腱が1つの腱条を送りだして,この腱条がすこぶる雑多な終り方をする.すなわち第5指の基節骨底に,同じ指の指背腱膜あるいは伸筋腱に,第5中足骨の体ないし小頭に,小指外転筋に,あるいは立方骨に終っている.M. fibularis quartus(第4腓骨筋)(第4腓骨筋はシナ人では100体側のうち17%(劉).日本人では28体のうち15体(53.6%) (進藤)に見られ,白木も1例を報告している(劉曜㬢:満州医学雑誌,第17巻,402~403,1932;進藤篤一:医学研究,12巻,2223~2233,1938;白木豊:愛知医学会雑誌14巻,511~514,1934).)というまれに見られる筋は短腓骨筋と長母指屈筋とのあいだで腓骨の後面に始まり,踵骨の外側面あるいは立方骨に停止し,または第5指に達する長指伸筋の腱と合している.

γ. 後方の筋群すなわち屈筋群hintere oder Flexorengruppe

下腿三頭筋M. triceps surae, Drillingsmuskel der Wadeとして腓腹筋の両頭およびヒラメ筋が総括される.

1. 腓腹筋M. gastrocnemius, Zwillingswadenmuskel. (図573, 575, 578, 579)

 脛側頭Caput tibialeは強大であって,大腿骨の内側顆から,腓側頭Caput fibulareはそれより弱くて,大腿骨の腓側顆から起り,これらは幅の狭い1つの腱条をあいだにはさんで鋭い角をなして合し,平たい1個の腱に続く.この腱はヒラメ筋のそれと合して下腿三頭筋腱Tendo m. tricipitis surae(Achillis).アキレス腱Achillissehneを作り,これは踵骨隆起に停止している.

 腓側頭の起始腱には21%に3~14mmの大きさの種子骨があり,腓腹筋頭種子骨Fabellaと呼ばれる.脛側,腓側両頭のあいだの溝のなかを腓腹神経という1本の皮神経が走っている.腓側頭の表面を大腿二頭筋の腱が交叉している.

 脛側頭の下方には腓腹筋脛側頭嚢Bursa capitis tibialis m. gastrocnemiiという1つの粘液嚢があり,これは半膜様筋腓側嚢Bursa m. semimembranacei fibularisと連絡していることがある.かくして生じた共通の嚢は腓腹筋半膜様筋嚢Bursa gastrocnemiosemimembranaceaと呼ばれる.アキレス腱と踵骨とのあいだには下腿三頭筋腱嚢Bursa tendinis m. tricipitis suraeがある(図579).大腿二頭筋腱と接触する場所には(まれに)二頭筋腓腹筋嚢Bursa bicipitogastrocnemialisという粘液嚢がある.

 神経支配:脛骨神経による.

 脊髄節との関係:L(IV)V, S. I, II.

 作用:この筋は足を足底の方に曲げ,それによって踵を挙げ,膝関節を曲げる.足を固定しているときには下腿および大腿をうしろに引く.

 変異:腓側頭は欠如することがあり,また痕跡的であることもある.Le DoubleおよびMacalisterは腓側,脛側両頭が腱様の条によって代られているのを見た.まれに両頭が2層に分れている.両頭が下腿の下部までたがいに独立していることがある.腓側頭の中には種子骨が21%に現れるのに,脛側頭の中にはただまれにしかそれが見られない.左右の両脚に種子骨が存在するものは約4%である.M. gastrocnemius tertius(第3腓腹筋)(第3腓腹筋M. gastrocnemius tertiusを有った1例が報告されている(西本勝之輔:長崎医学会雑誌,16巻, 2471~2475,1938).) (Freyによれば約3%にみられる)と呼ばれる過剰筋束は大腿骨の膝窩平面,大腿骨稜の内側唇,内転筋管裂孔,膝窩動静脈の血管鞘および坐骨神経から起っている.

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最終更新日13/02/03

 

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