歴史的な偉大な解剖学書
浅枝は願の前面で筋の上を通って下唇にいたり,深枝は筋と骨とのあいだの深部で枝分れする.
e)f)下唇動脈と上唇動脈Aa. labiales mandibularis et maxillaris.この両者は口輪筋の内方にある.下唇動脈は下顎骨の下縁の上方,または口角の近くで起り,下唇の筋や皮膚の中をうねってとおり,反対側の同じ動脈と吻合し,またオトガイ下動脈および下歯槽動脈(顎動脈の枝)の終枝の1つとも吻合する.
上唇動脈はいっそう太くて,またより強くうねっており,上唇の実質中にひろがって,反対側の動脈とつながる.上唇動脈と下唇動脈が1本の共通の小幹をもって起ることがまれではない.上唇動脈は上唇にいたる多数の枝のほかに鼻とその付近にも分布し,また上唇に終る諸筋に若干の枝をあたえる.この枝は眼窩下動脈,顔面横動脈,頬動脈につながる.
g)眼角動脈A. angularis. 眼角動脈は顔面動脈の終枝で鼻の側壁に沿って上方に走り,多数の枝をもって鼻翼と鼻背を養う.これは眼動脈の鼻背動脈につながっている.
変異:顔面動脈と舌動脈はまれならず共通の短い1本の幹をもって起こっている.ときどき顔面動脈が高い所で出て,ついで下方に曲がって下顎にいたる.顔面動脈は太さとその分布に著しい変動がある.まれにこれがオトガイ下動脈として終り顔面に達しないことがある.時には上唇まで達して終る.顔面動脈の分布区域が少いときにはその代りによく発達した眼動脈の枝が顔面にまで広がり,または顔面横動脈の枝がおぎなっている.扁桃枝が独立した枝としては欠けていることがまれでない.しばしばオトガイ下動脈が舌動耳辰から出ていたり,顔面動脈が舌下動脈を出したりしている.
4. 胸鎖乳突筋動脈Arteria sternocleidomastoidea(図639, 640)
この動脈は細い1本の枝であるが,ときにそれが数本あることもあり,舌下神経をまたいで胸鎖乳突筋にいたる.
5. 後頭動脈Arteria occipitalis(図639~642)
後頭動脈は外頚動脈の後がわから,ふつうは顔面動脈と向きあった所で出て,顎二腹筋の後腹に被われて上方にすすみ,環椎の肋横突起の上にいたり,外側頭直筋と顎二腹筋の間で側頭骨の後頭動脈溝の中を後方に向う.
そのさい胸鎖乳突筋と板状筋および頭最長筋に被われてヒいる.それからふたたび方向を変えて板状筋の内側縁で僧帽筋の停止を貫き,後頭部の皮膚に密接しつつ頭頂に向かってすすみ,多数の枝を出して後耳介動脈,浅側頭動脈の枝および他側の後頭動脈の枝と吻合する.
顎二腹筋の後腹・茎突舌骨筋・板状筋・頭最長筋・胸鎖乳突筋に多くの枝を出すほかに次の枝を送り出している.
a)乳突枝R. mastoideus.これは乳突孔を通って後頭蓋窩の硬膜に分布する.
b)耳介枝R. auricularis.耳介の後面にいたる.
c)筋枝Rr. musculares. 項筋にいたり椎骨動脈と深頚動脈の枝とつながる.特に太い1本の枝が頭板状筋と横突後頭筋の間を走るが,これを下行枝Ramus descendensという.
d)硬膜枝R. meningicus.この動脈の1終枝が出している細い枝であって,頭頂骨の頭頂孔を通って脳硬膜に達する.
最終更新日13/02/03