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a)反回骨間動脈A. interossea recurrens.これは肘筋に被われて上腕の橈側上顆と肘頭のあいだの部分に向かって近位方にすすみ,付近の動脈(とくに中副動側脈)とつながる.

2. 掌側骨間動脈A. interossea volarisこれは骨間膜の掌側面において,たがいに接している深指屈筋の縁と長母指屈筋の縁とに被われて遠位方に向かって方形回内筋までいたり,そこで骨間膜を貫いて背側手根動脈網にはいる(図654, 655).

 この動脈は正中動脈A. medianaという長い細い枝を正中神経にあたえ,また栄養動脈を橈骨と尺骨に送り,さらに多数の筋枝を出している.

 神経:背側および掌側前腕骨間神経から来る(Rauber).

 変異:掌側および背側骨間動脈はときとして別々に尺骨動脈から出ている.また総骨間動脈が普通より高いところで起こっていることがある.これが少数の例で腋窩動脈から出ている.掌側骨間動脈が尺骨動脈の枝の一部や橈骨動脈の枝の一部を代行していることがある.

 いちばん多いのはこのような異常が正中動脈について起こっている場合であって,この正中神経に伴っている枝はときとして芸しく強く発達している(ヨーロッパ人で7.2%,日本人で8.2%, Adachi).正中動脈はふつう掌側骨間動脈の枝であるが,ときに尺骨動脈から出ており上腕動脈から出ていることさえある.この動脈が強く発達しているときにはたいてい正中神経とともに手掌に達して,浅掌動脈弓か,または若干の指の動脈とつながっている.

肘関節動脈網Rete articulare cubiti (図655)

 これは非常に豊富な動脈のつくる網であって,肘関節に向かってやってきた数多くの動脈枝によって生じ,肘関節の全体をとりまき,特にその後面で強くなっている.肘関節動脈網の構成には次のものがあずかる.

上腕動脈から

1. 橈側副動脈A. collateralis radialis

2. 中側副動脈A. collateralis media

3. 近位尺側副動脈A. collateralis ulnaris proximalis

4. 遠位尺側副動脈A. collateralis ulnaris distalis

5. 尺側反回動脈A. recurrens ulnaris

6. 橈側反回動脈A. recurrens radialis

7. 反回骨間動脈A. interossea recurrens

背側手根動脈網Rete carpi dorsale (図659, 660)

 浅層の部分は背側手根靱帯の上で皮下にある(図659).

深層の部分は本来の背側手根動脈網Rete carpi dorsaleであって手根骨の深部の靱帯装置にすぐに接して諸伸筋の腱の下に広がっている(図660).

 この網の形成にはまず橈骨動脈と尺骨動脈から出るそれぞれの背側手根枝Rr. carpici dorsalesが関与する.そのほか掌背の両骨間動脈の終枝がこの網にはいる.

 深層にある動脈網がよく発達しているときには,それから5本の背側中手動脈Aa. metacarpicae dorsalesが出て第2一第5中手骨のあいだで骨間筋の上を遠位にすすみ,掌側中手動脈Aa. metacarpicae volaresの穿通枝Rami perforantesにつながり,ついで背側指動脈Aa. digitales dorsalesに分れてそれぞれ隣り合った指背の両側縁部に分布している(図659, 660).背側指動脈は基節の背部と中節の近位半のみを養うのである.

 たいていの場合,各指の基部で背側指動脈の起始相互のあいだになお第3の枝があって,総掌側指動脈の分枝点につづいている.

掌側手根動脈網Rete carpi volare(図658)

 これは手根骨の掌側の靱帯装置の上にあり,掌側骨間動脈の弱い終枝と橈骨動脈の掌側手根枝,および尺骨動脈の掌側手根枝,それに深掌動脈弓からの2-3本の枝によって作られている.

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最終更新日13/02/03

 

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