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 これは下顎のところで顎下腺の近くにある6~10個の顎下リンパ節Lymphonodi submandibularesにはいる.そのうち少数のものはしばしば頬筋の外面にある1個あるいはそれ以上の頬リンパ節Lymphonodi buccalesを通る.顎舌骨筋の下面には,舌骨の上方にいくつかのオトガイ下リンパ節Lymphonodi submentalesがある.これはまた下唇からの流れを受け入れている.

d)顔面深層のリンパ管は眼窩と鼻腔,翼口蓋窩,側頭下窩, 咽頭,口蓋からやって来る.

 このリンパ管は下顎骨の内側で深顔面リンパ節Lymphonodi faciales profundiにはいり,それから出るリンパ管は顎静脈とともに下顎角に達する.

 上に述べた諸器官から少数のリンパ管が耳下腺の内部にある耳下腺リンパ節Lymphonodi parotidiciにいたる.

 主な器官に従って列べてみると,顔面頭蓋に属する諸器官のリンパ路ならびに領域リンパ節は次のごとくである.

 眼瞼結膜のリンパ管には内側と外側の流出路がある.内側のものは顎下リンパ節にいたり,外側のものは耳下腺リンパ節に開口している.一眼球と視神経のリンパ路については第2巻を参照されたい.

 耳介外耳道のリンパ管は前方は耳下腺リンパ節に,後方は耳介後リンパ節に,下方は付近にある耳下腺リンパ節の一部にいたる.

 鼓膜のリンパ管は外耳道のものとともに耳下腺リンパ節にいたる(Most).

 耳管のリンパ管は中耳のリンパ管とつづいている.この2つの場所の領域リンパ節は外側咽頭後リンパ節Lymphonodus retropharyngicus lateralis(Most) (図728)と深頚リンパ節である.

 内耳のリンパ腔については第6章聴覚器の項を参照されたい.

 のリンパ管には上方と下方の流出路がある.上方の流出路は眼瞼のリンパ管とともに耳下腺リンパ節にいたり,下方のものは外鼻の部分の全体からやってきて,頬リンパ節を通って顎下リンパ節に向かってすすむ(図727).

 鼻粘膜のリンパ管は一部は前方に,一部は後方にすすむ.前方に向うものは外鼻のリンパ管とつながり,その領域リンパ節としては顎下リンパ節,頬リンパ節,耳下腺リンパ節がある.後方の流出路は耳管咽頭口の近くに集まり,そこから一部は深頚リンパ節に,一部は咽頭後リンパ節Lymphonodi retropharyngicにいたる.

 上唇のリンパ管は顎下リンパ節に注いでいる.下唇の粘膜下のリンパ管も同じくこれに流れていくが,一方下唇の皮下のリンパ管はオトガイ下リンパ節に所属するのである.

 歯肉と歯のリンパ管はオトガイ下リンパ節,顎下リンパ節,深頚リンパ節にいたる.

 硬口蓋と軟口蓋,口蓋扁桃,ロ蓋弓のリンパ管は深頚リンパ節に注ぐ.

 舌のリンパ管は非常にたくさんあって,これが密な網をなし,かつ口腔底のリンパ管と密につながっている.舌根は例外をなし,これは舌体とごくわずかしかつながりをもっていない.側方と後方の流出路が区別される.

 前方へ流出するものは舌小帯に沿って顎舌骨筋を通ってオトガイ下リンパ節にいたる.側方へは舌下腺の前と後を通り,同じく顎舌骨筋を貫いて,オトガイ舌骨筋と舌骨舌筋の側方にある少数の存在不定の舌リンパ節Lymphonodi lingualesをへて,顎下リンパ節に達する.後方に向うものは有郭乳頭のあたりから出て咽頭壁の口蓋扁桃の近くを貫いて深頚リンパ節にすすんでいる.

 耳下腺と顎下腺の領域リンパ節はおそらくこれらの腺に接したり,あるいはその内部にあるリンパ節であろう.

B. 頚部のリンパ管

a)頚部浅層のリンパ管は一部は頭部浅層のリンパ管を受け入れ,主として外側浅頚静脈の周りに集まるが,特に胸鎖乳突筋の下部のうしろで浅頚リンパ節Lymphonodi cervicales superficialesといっしょに頚リンパ叢Drosseladergeflechtをなしている.

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最終更新日10/08/28

 

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