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[図730] 胸部,腋窩,上腕の手掌の浅層のリンパ管( 1/6) (Mascagniによる)

c)背部浅層のリンパ管はいろいろなところから腋窩に向かって走っている.

 このリンパ管は項部からは僧帽筋の上を越え,背中の上部からは三角筋の上を越え,また背中の下部では広背筋に接して走り,いずれも腋窩リンパ節の後方の部分に達する.

d)上肢浅層のリンパ管は手掌と手背にある密なリンパ管網からおこるが,すでにそこには指の背面と掌面の側縁をとおる細い小幹が形成されている.

 手掌ではおのおのの指のリンパ管が合してそれぞれ1本になった幹がたがいに連なってリンパ管弓を作る.これを手のリンパ管弓Arcus lymphaceus manus(図730)といい,その両脚は手掌の橈尺両側縁にあるリンパ管の束と合して前腕に伸びている.

 前腕を走るリンパ管は上腕に向かつて尺側と橈側のそれぞれ1本の束となってすすんでおり,これらのものは主として屈側をとおるのであって,前腕の背面にあるリンパ管は多くは尺側縁を廻って屈側に移り,橈側縁を廻ってくるものは少ない.上腕の上部では肩のリンパ管が主に外側縁を廻って上に述べたリンパ管の束の方にきている.これらの浅層のリンパ管には腋窩にいたるまでの間にたいていわずか1つか2つの浅肘リンパ節Lymphonodi cubitales superficialesが介在しているだけである(図730).このリンパ節は尺側皮静脈の通る裂け目(Hiatus basilicus)の下方で上腕筋膜の表てにあるが,ときにはその中にもある.

c)上肢深層のリンパ管は太い血管の通り道に沿っている.したがって前腕では橈側と尺側および骨間とに3組の大きな集りがある.これらのリンパ管の1つに,しばしば前腕の中ほどで前腕リンパ節Lymphonodus antebrachiiがはさまっている.さらに走ってゆくうちにこれらのリンパ管のうち少数のものは浅層のリンパ管とつながる.ほかのものは上腕の下部にある深肘リンパ節Lymphonodi cubitales profundiにはいっている.

最後にこれらのリンパ管はすべて腋窩リンパ節にはいるのである.

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最終更新日13/02/03

 

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