Rauber Kopsch Band2. 008   

口唇の境界としては,上唇にとっては外鼻の底,また左右両側の皮膚の溝である鼻唇溝Sulcus nasolabialis,下唇にとっては軽く上方にまがって横走する溝であるオトガイ唇溝Sulcus mentolabialisが境をなしている(図11).

 鼻中隔からおこって上唇の中央部を下る1本の溝があって,両側の堤に境されている.この溝を人中Philtrum, Nasenrinneという.人中の下端で上唇は上唇結節Tuberculum labii maxillarisという1つの高まりをなしている.これに対応して下唇には1つのへこみがある.ここから口裂は対称的にS状のまがりをなして外側に向かってのびている.

 上下の口唇にそれぞれ外から内へ皮膚部,移行部,粘膜部の3部が区別される(図8).

 皮膚部は外皮の性質をみなもっていて,毛・脂腺・汗腺がある.

 移行部Übergangsteilには毛がない.しかし脂腺がある(すべての成人の50%において) (図9).上皮の下の結合組織層は数多くの丈の高い乳頭をなし,これが毛細血管網に富むので,口唇の赤い色がおこる.上皮層は重層扁平上皮であって,つよく発達して,その上よく透きとおる.

 粘膜部Schleimhautteilは多数の粘液腺すなわち口唇腺Glandulae labialesをもつことが著しい.これは形の上から胞状管状腺であり,微細構造からは混合腺すなわち粘液性と漿液性の両方の終末部がまじってできている腺である.その多数ある導管は細くて粘膜部の表面に開口するが,それにつづく腺体はかなり大きくて粘膜と筋肉の間にあり,しばしば筋束のあいだにもはいりこんでいる.この腺は口唇の中央部および側方部では数も大きさも滅ずる.そして唇交連のところになると欠けている.

[図6]消化管の模型的概観(1/5.5)

S.008   

最終更新日13/02/03

 

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