Rauber Kopsch Band2. 023   

ゾウゲ細管の走り方はまつ直ぐでなくて,いくつかのかなりつよい曲りをしていることが著しい(一次弯曲Primäre Krümmungen).最初の弯曲は歯髄腔の近くにあって凸を歯根のがわに向けており,そのつぎの弯曲では凸を歯冠のがわに向けている.そのほかにゾウゲ細管はその全長において波状あるいはラセン状にまがっている(二次弯曲sekunddire Krümmungen).数多くのゾウゲ細管でその主な弯曲が同じようなぐあいにたがいに平行して走るので,研磨標本において光の特異な反射作用がおこり,中等度の拡大でみるときに弓なりにまがったいくつかの線があらわれる.この線をシュレーゲル線Schregersche Linienといい,歯の横断研磨標本,ことに歯根のそれでは同心性にならんでみえる.縦断研磨標本では線がたがいにほとんど平行してはいるがその同心性の並びが横断のばあいほどはっきりとみえない.

 ゾウゲ細管の平均直径は2.5~4.5µであり,末梢へ向かって1.5µにまで減ずる.個々の管のあいだの平均距離は管じしんの広さのおよそ2倍ないし3倍である.

しかし多くの場所でそれよりいっそう密集している.Hagenbusch(1931)によると歯髄の近くで1qmmのゾウゲ質が45,000ないし50,000のゾウゲ細管をもっている.

 ゾウゲ細管はその経過のあいだに多数の細い横枝Queräste(側枝Kollateralen)をだして,これらの枝は近くの細管の枝と結合したり,あるいは行きづまりをして終つたりする.歯根の範囲およびゾウゲ質の縁のところで,こういう横枝がとくに数多く存在する.セメント質との境のところでゾウゲ細管は細かい枝分れをして終り,その細かい枝は歯頚と歯根の範囲では小さい腔所(球間腔Spatia interglobularia)の集まった1層すなわちトームス顆粒層Tomessche Körnerschicht, Schicht der kleinen Interglobularräume(図31)に移行している.そしてこめ顆粒層の小さい腔所がさらにセメント質の骨小腔とつながっているのである.

 ゾウゲ質とエナメル質の境界に近いところに,すなわち歯冠の範囲であるが,大きい球間区große Interglobularräumeの層が存在する(図34).これは研磨標本においてゾウゲ質のいわゆる輪郭線Konturlinienをおこすのである.

[図31]ゾウゲ細管,人の大臼歯の歯根の横断研磨標本の一部×350.

 大および小の球間区はゾウゲ質の一部で石灰沈着していないところであって,やはりゾウゲ細管で貫かれており,球間ゾウゲ質Intergtobulardentinともよばれる.

ゾウゲ細管の外方端は大部分がエナメル質の内方の境界を越えていないのであるが,一部はある距離だけエナメル質のなかに達している(図34).

 ゾウゲ質はゾウゲ細管のすぐ周りのところおよび歯髄腔の表面に接して,比較的に固くてv. Saal(Z. Zellforsch.,1920)によると石灰沈着していない層があって,歯線維鞘Zahnfaserscheide(Neumann)あるいは境界膜Grenzhdutchen(Kölliker)という.ゾウゲ細管のなかにあるゾウゲ質線維Zahnfasernはゾウゲ芽細胞の突起であるが,細管の内部をみたすのでなくて,管のなかで少量の組織液によりとりまかれている(図36).

 エナメル質に対するゾウゲ質の境界面は細大いろいろのでこぼこを呈している.そのでこぼこは小さい高まりやへこみの形をしている.なおゾウゲ質の外面に小さい6角形の模様がみられるのは6角稜の形をしているエナメル小柱の印したものである.

2. エナメル質Substantia adamantina, Schmelz.

 歯冠の表面を被っている硬くて,やや黄色をおびた,あるいは青みがかつて白い1層であって,咀嚼面において最も厚く発達し,歯頚に向かって減じ,ここで全くなくなる.

S.023   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る