Rauber Kopsch Band2. 077   

 上皮は丈けの高い単層円柱上皮(図105)であって,その個々の細胞に多くは2部が区別され,上部が粘液性であり,下部が原形質性であって,ここに核がふくまれる.円柱細胞のあいだで基底部に補充細胞Ersatzzellenがある.

 粘膜の結合組織性の部分がいわゆる固有層であって,疎な結合組織より成り,ここはリンパ性組織の性質を多分におびて,リンパ球をいろいろな量にもっている.粘膜にふくまれる腺があまりに多数であるために,固有層はほとんど腺の間のせまい隔壁g)1系統にすぎないものとなり(図91, 105),この隔壁は粘膜をその表面に平行に切った標本では,隔壁にかこまれた腺じしんとともに,はなはだ美しい観を呈するのである.ただ腺底の下のところで固有層がやや密な1層をなして集り,これがすぐに粘膜筋板に接している.幽門腺はいくらか広い(固有層より成る)間隔を互いのあいだにもっている(図92).

 粘膜筋板は平滑筋の集まった薄い2, 3の層よりなっていて(図105),その各層の平滑筋が走る方向はたがいに違っている.この層から短い間隔をおいて細い筋束が分れてでて,腺のあいだをへだてる固有層の結合組織のなかを粘膜の表面の方へ上つている.

a)胃底腺Glandulae gastricae.この腺の数は莫大であって,1qmmの表面におよそ100個ある.これは不分枝あるいは叉状に分岐する管状腺であって,それが1個だけで,あるいは2個以上がいっしょに,1つの小さい前庭Vorraumに開口しており,粘膜の表面像ですでに胃小窩Foveola gastricaとして述べたものは,この前庭の入口である.胃底腺は上皮細胞の列およびそのそとに接する基礎膜でつくられており,基礎膜のそとを粘膜の結合組織部すなわち固有層がとりかこんでいる.

 おのおのの腺をみると前庭のすぐ近いところが最も細くてHalsとよばれ,それにつづいてKorperがあり,腺が行きづまりになって終るところをGrundという(図105).腺頚は初めに丈けの低い円柱細胞をもつのみであるが,ついで2種の細胞が1層をなして存在する.すなわち小さい方の副細胞Nebenzellenと大きい方の傍細胞Belegzellenとである.腺体と腺底では主細胞Hauptzellenと傍細胞とがある.頚と体の移行部では3種の細胞がすべてみられる(図105, 106).副細胞は粘液細胞に似ているもので,扁平な形あるいは圧されて深いへこみのある核をもっている.主細胞は小さくて暗くみえ,円柱状あるいは円錐状の細胞で,顆粒にとむ原形質と小さい球形の核をもっている.これは多数に存在する(図91, 107).

 傍細胞はたいていはずっと大きくて,明るくみえ,いくつかの角をもつが,しかも円味をおび,原形質は細かい顆粒をもち,核は大きくて球形または卵形である.その数は主細胞にくらべるとはるかに少ないし,またその分布が不規則である.傍細胞はしばしば腺腔からかなり離れている(主細胞はそんなことがない) しかしまた時としてその内面の一部をもって腺腔に面している.傍細胞の内部に細胞内分泌細管bznnenzellzge Sekretkapillarenの密な網がみられる(図108, 110, 111).この網が合して2,3本の比較的太い管となって,腺腔に対して直角をなして注いでいる.

 腺の機能状態によってこの細胞内分泌細管の強さが変化する.消化のおこなわれているときによく発達しており,永く食物をとらないときは貧弱になる(図110, 111).

 なおまた傍細胞の表面に細胞間分泌細管zwischenzellzge Sekretgangeもみられる(図107).つまり胃底腺では2種の分泌細管がともに存在するのであって,そんなことは他では汗腺と肝臓においてみられるのみである.(K. W. Zimmermann, Ergebn. d. Physiologie, 24. Bd.,1925. )

β)幽門腺Glandulae pyloricaeは単一あるいは複合の胞状管状腺であって,相となる腺の互いのあいだの間隔は胃底腺におけるより大である.この腺は勇細胞をもたないで(ごくわずかそれをもっていることもあるが),腺細胞がすべてほぼ一様に円柱状のものである(図92).その前庭がしばしばはなはだ深い.

b) リンパ小節Lymphonoduli gastrici.孤立リンパ小節の形で胃の粘膜のいろいろの場所に存在する.

S.077   

最終更新日13/02/03

 

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