Rauber Kopsch Band2. 112   

 回腸の終りの部分は小骨盤から上後方かつ右の方へすすんで,盲腸と結腸の境のところで大腸に達する.回腸から大腸へ通じる口は2つのひだ(上唇Labium cranialeと下唇Labium caudale)からなる1つの弁すなわち結腸弁Valvula coliをそなえていて,これが腸の内容を小腸から大腸にゆくことを許すが,その逆は許さないようにできている(図163).

 上下の両唇が回盲結腸口Ostium iliocaecocolicumというほず横走する細長い口に向かって集中した形である.この細長いすきまである回盲結腸口の両端で上下の両唇が相合して,それぞれ1つの横走するひだとなって大腸の粘膜の内面につづている.この部は結腸弁小帯Frenula valvulae coliとよばれる.

 回腸に向かった結腸弁の面は小腸粘膜で被われ,この弁の大腸に向かった面は大腸の粘膜をもっている.大腸の壁がひつばられると,2つの小帯が緊張して,弁の自由縁は相接し,そのため大腸の内容が逆流しないようになっている.

 盲腸と虫垂ははじめは1つの長い単一のものであった.新生児においても両者のちがいがあまり著しくなくて,盲腸が次第に細くなって虫垂に移行する.このような関係が成人にも残っていることがあって,そのさいは虫垂のかなり大きい部分が2~3cmの太さをもっている.まれには虫垂が全く欠けている.

 RibbertとZuckerkandlによると虫垂は荒廃する傾向が大きいのであって,Ribbertは25%において部分的な廃止,3.5%に全体的な廃止をみており,Zuckerkandl(Anat. Hefte, 4. Bd. )は23.7%に部分的,13.8%にその全体的な廃止をみている.

 変異:盲腸が見かけの上で,あるいは実際に普通より長くなっていることがまれでない.Vogt(Verh. anat. Ges.,1921)によると移動盲腸Caecum mobileは老人には必ずおきるといってもよい現象であって,年をとるとすべての内臓が全般的た下降することの結果としておこる.

 盲腸が普通より高い所にあることHochstand des Caecumsはしばしばみられる.その程度が大であって,上行結腸が全く欠けているとおもわれることもある.妊娠のときにしばしば盲腸と虫垂および上行結腸が,拡大した子宮のために上方に変位させられている.

 比較解剖:盲腸は哺乳動物には全般的にみられるが,その各部類によってごく大きい変動を示すのである.あるものではひじょうに小さいか,または全く欠けている.草食動物では全身の長さよりももっと長い盲腸をもつものがある.

 局所解剖:盲腸の位置.右の腸骨窩で腸骨筋膜の上にあり,盲腸の前面は鼡径靱帯の中央部の上方で前腹壁に触れている.また盲腸が後腹壁に固着するひろさはいろいろで,そのひろさは腹膜の関係によって異なるのである.回腸が盲腸に開口するところはモンロー線Monrosche Linie(前腸骨棘と膀とをむすすぶ線)の中点にあたり,ここをマック・バーネイ点Mc. Burneyscher Punktという.ランツ点Lanzscher Punktは左右の前腸骨棘をむすぶ線の右1/3のところをいうのであって,ここは虫垂が盲腸に開くところに当たっている.

 盲腸の位置の異常をThorsch(Z. Anat. u. Entw., 61. Bd.,1921)が記載している.盲腸が多少とも遠く左方に達して,正中線まできたりジあるいはそれをこえていることさえあり,同時にやや下方に達している(これらを合せるとおよそ18%).盲腸が上方かつ右に位置を変えていることは約12%にみられる.

 虫垂の位置.最も多い1の位置は右の分界線をこえて小骨盤に達し,腸骨動静脈と交叉するのである.そのさい男では右の尿管と精巣動静脈に,女では卵巣と卵管に近接している.2の位置は回腸と盲腸のつくる角にある.3の位置は回腸の終りの部に接している.4の位置は盲腸と上行結腸の後面に接している.

2. 結腸Intestinum colon, Grimmdarm

 上行結腸Colon ascendensは右の腸骨窩からほとんどまっすぐに(軽く外側へ弓なりにまがって)肝臓の内臓面にまで上り,この面に結腸圧痕Impressio colicaというへこみを生ぜしめている.胆嚢の近くで上行結腸は前方にでて,ついで左にまがって横行結腸に移行する.そこに生ずる浅い弯曲が右結腸曲Flexura coli dextra(s. hepatica)である(図99, 160, 161).

 上行結腸は盲腸よりも細いが,横行結腸よりは太い.そして前方は小腸の集りで一部被われ,後方は腹膜によって後腹壁に固く着いている(図160, 164).

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最終更新日13/02/03

 

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