Rauber Kopsch Band2. 115   

 ケルクリング襞がなくて,その代りに盲腸と結腸には結腸半月ヒダPlicae semilunares coliがある.これはケルクリング襞とちがい,その形成に粘膜のみがあずかるのでなくて,筋層のつづきがそのなかにふくまれている(図165).また半月ヒダは腸の全周にわたるのでなくて,全周のおよそ1/3しか続いていない.つまり結腸ヒモのあいだの3つの縦の帯状のところだけに或る距離をおいて横に張られている.この高まりのあいだにあるへこみが結腸膨起Haustra collであって,大腸の外面においてすでに述べた,規則正しい3列をした同名のものがこれに当るわけである.1つの粘膜のひだと輪走線維がそのなかにはいってできている結腸弁Valvula coliについてはすでに述べた.同じく虫垂弁Valvula processus vermiformisについてもすでに述べたのである.大腸の粘膜にはリーベルキュン腺Lieberkühnsche Drüsenすなわち腸腺Glandulae intestinalesが密にならんで存在する(図124, 165).腸腺の長さは直腸に向かって増すのである.腸腺と腸腺のあいだでは粘膜が円柱上皮をもっており,その個々の細胞は小腸の上皮と似た小棒縁Stäbchensaumをもっている.そのほかに多数の杯細胞がある.リーベルキュン腺のあいだを占めて固有層Lamina propriaが豊富に発達していて,これは平滑筋線維より成る粘膜筋板Lamina muscularis mucosaeによって,はなはだ疎にできて脂肪細胞をふくむ粘膜下組織Tela submucosaから境されている.これら2種の上皮性の腺(杯細胞と腸腺)のほかに数多くの孤立リンパ小節Lymphonoduli solitariiがある(図124).虫垂ではリンパ小節が密集して存在する(図157).

 大腸の血管とリンパ管.大腸に分布する動脈は上および下腸間膜動脈からくる.また大腸からでる静脈は小腸のそれと同じように門脈に入る.リンパ管は小腸におけると似た関係を示すが,絨毛が無いだけいっそう簡単な状態になっている.

 大腸の神経は多数あって,腹腔神経叢・大動脈神経叢.腸骨動脈神経叢・上直腸神経叢から来る.他の消化管の諸部と同じように粘膜下神経叢と腸筋神経叢が発達している.

II.直腸Intestinum rectum(=終腸Intestinum terminale),Mastdarm. (図167, 168, 262, 266, 275, 276)

 直腸は腸の終りの部分であって,第3仙椎の上縁から会陰まで達している.しかしその間をまっすぐに走らないで,矢状面および前額面でまがっている.

 矢状面におけるまがりは2つある.その1つは仙骨の凹面に相当して後方に凸をえがくのであって仙骨曲Flexura sacralisとよばれ,第2のものは前方に凸であって,腸の末端部が尾骨尖をまわって後方にまがるために生ずるもので,会陰曲Flexura perinealisという(図262, 266, 276).

 前額面における弯曲はいくつかあり,個体的に変化に富むものである.それはなかなか著しいもので,直腸の一部が骨盤の右半に突出しているほどである.ふつうは右側に向かった2つの弯曲があり,その上方のものは岬角の左側ではじまり,第2の右側に向かった弯曲は肛門の近くにある.

 直腸は結腸や盲腸と違って膨起をもっていないので,表面が平滑で円柱状を呈し,結腸ヒモもない.直腸の長さは15~20cmで,その太さはS状結腸より細い.ただ横ヒダPlicae transversaeの上方に多少の差はあるが,かなり広がったところがあって膨大部Pars ampullarisとよばれる.

 最後のところを直腸肛門部Pars analis rectiといい,そこで消化管が外へ開口する.直腸が収縮しているときには粘膜の全体にわたって輪走や縦走する数多くのひだがある.壁が中等度に張られると消えるべきひだは消えるが,そのとき消えない性質のひだが若干のこるのである.それはふつう3本の輪走するひだであって,これらを横ヒダPlicae transversaeという.その中央の高さにあるのが最も大で,右側にあり,肛門の上方6~6.5cmにあって,コールラウシュヒダKohlrauschsche Falteとよばれる.他の2つは左側にある.おのおののひだに向い合って,腸管がその反対がわで外方へ膨れだしている.

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最終更新日13/02/03

 

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