Rauber Kopsch Band2. 114   

大腸壁の各層

 大腸の壁は胃や小腸でみられたのと同じ層からできている(図165).

a)漿膜Tunica serosa.これは上行結腸と下行結腸では小腸や他の大腸の部分におけるほど完全にそのまわりをとりまいていないで,後壁の大きい部分が結合組織によって後腹壁およびそこにある諸器官と結びついている.しかし横行結腸とS状結腸では漿膜の関係が小腸の大部分におけると同じであって,それはこの2つの部分がそれぞれ結腸間膜Mesocolonをもっていることである.自由ヒモと大網ヒモに沿って漿膜が脂肪組織によってもち上げられて,その脂肪組織といっしょに絨毛状あるいは葉状の突出部をなしている.これを網膜垂Appendices epiploicaeという(図109, 160, 162).

b)筋層Tunica muscularis.この層は他の腸の諸部と同じく,外方の縦走線維層と内方の輪走線維層とからなっている.

 しかしその縦走繊椎層が他の腸の諸部では腸の全周をとりまく平等な厚さの層をなしているのに対して,盲腸と結腸では3ヵ所でかなり強く発達している.そこは低いが,はっきりと分離されていて,漿膜をとおして見える3本の縦条をなしており,結腸ヒモTaeniae coliとよばれ,その1本の幅は10mmで厚さは2~3mmである.結腸ヒモのあいだの所では縦走線維層は薄くて,肉眼的には認めにくい層をなして広がっている.結腸ヒモは虫垂の根もとの近くではじまる.虫垂じしんでは縦走線維層は紐が合した形で,一様なかなり厚い層をしている.また結腸ヒモは下方には直腸に移行する所まで,分離したすじとしてみられる.しかし直腸では3つのヒモがふたたび合して著しい厚さのひとまとまりの層をなしている.もっとも直腸の所々でいっそう厚い層の個所がある.

 3本の結腸ヒモの1つは間膜ヒモTaenia mesocolicaとよばれて,これは結腸間膜の付着するところに沿っている.第2のヒモを大網ヒモTaenia omentalisといい,結腸壁の前縁に当り,また横行結腸では大網の付着するところである.第3の自由ヒモTaenia libera(図109, 159)は腸の表面で何も特に付着していない所にある.すなわち上行および下行結腸では内側縁に,横行結腸では下縁に当たっている.

 3本の結腸ヒモは結腸壁の他の諸部よりも長さが短いのであって,腸壁のくびれている所をこえてつづいており,結腸膨起より深いところにある.ヒモとヒモのあいだには縦につづく帯状の部分がやはり3本あるわけで,ここでは腸壁がいっそう強くはりだしている.結腸ヒモをとり去って腸壁をひつばってみると,膨起はなくなり,腸はいっそう長くなる.

 輪走線維層は盲腸・結腸・虫垂の全表面を通じてひとつづきに広がった層をなしており,膨起と膨起のあいだの所では,いくらか他の部分よりも強く発達している.

c)粘膜Tunica mucosa.大腸の粘膜が小腸のそれとちがう主な点は,まずケルクリング襞と絨毛がともに欠けていることである.

[図165]下行結腸の壁の縦断,同時に1つの結腸半月ヒダが横断されている.

S.114   

最終更新日13/02/03

 

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