Rauber Kopsch Band2. 163   

肺根では左右ともたいていは2本の幹,すなわち右と左の肺静脈Vv. pulmonales dextrae et sinistraeに集まって,その血液は心臓の左心房に注ぎこんでいる(第1巻の脈管学を参照のこと).

2. 肺は肺動脈のほかに特別な栄養血管として気管支動静脈Vasa bronchaliaをもっている.肺はこの点からいうと肝臓に似ている.後者では肝門から太い静脈の流れと,細い動脈の流れがはいっている.気管支動脈Aa. bronchalesは直接に,あるいは間接に大動脈から出て,1本ないし3本のものが各側の肺門からはいり3つの領域に分布している.a) 気管支樹の壁と血管の壁,および気管支のリンパ節;b)小葉間中隔;c)胸膜下枝として粗い網や細かな網を作って胸膜に分布している.

[図219]肺胞壁 (ヒト)肺胞の表面に沿って切ってある ×約800

 網状をなす毛細管の一部は切断され,一部はその管壁の面がみえる.黒は毛細管の基礎膜(灰色)がふくむ銀好性線維,青は被蓋細胞(M. Clara, Z. mikr.-anat. Forsch., 40. Bd.,1936).

[図220]肺胞の壁の毛細管網(ネコ)×100

 *肺胞壁の毛細管網を表面からみたところ.

気管支樹の末梢部では気管支動脈と肺動脈の終枝との吻合がみられ,また肺静脈との動静脈吻合もたくさん見られる.気管支静脈Vv. bronchalesはその血液を肺胞管や細気管支の毛細管からではなくて,気管皮樹の細大いろいろの枝から受け入れている.気管支静脈は気管支動脈ほどに肺のなかで広くひろがってはいない.それは気管支動脈によって肺に導かれた血液の一部は肺静脈の方に移行するからである.肺動脈の枝と気管支静脈の間にある動静脈吻合はV. Hayek(Z. Anat. Entw.,112. Bd.,1942)により記載されている.気管支静脈は肺根に集まって,右は右縦胸静脈に,左はふつう第3肋間静脈の幹に開口している.

3. リンパ管は浅層の密な胸膜下リンパ叢subpleuraler Plexusと,深層にあって肺胞管の間および肺小葉の間にあるリンパ管の網,および気管支樹の壁に所属する網からなっている.リンパ管は比較的太い気管支の部分に沿って存在する気管支リンパ節Lymphonodi bronchalesにいたり,(気管支肺リンパ節Lymphonodi bronchopulmonalesとすべきであろう.(小川鼎三))さらに肺根で肺リンパ節Lymphonodi pulmonales にはいる.(気管支リンパ節Lymphonodi bronchalesとすべきであろう.(小川鼎三))肺根からは左側のリンパ管は大部分が直接に胸管へ開き,小部分は左の内頚静脈と鎖骨下静脈のあいだの“静脈角Venenwinkel”に開口する.右側のリンパ管は右気管支縦隔リンパ本幹に集る.下葉から来るリンパ管は後縦隔リンパ節にはいる.

4. 肺の神経は迷走神経と交感神経から来ていて,後と前の肺神経叢iplexus pulmonalis dorsalis et ventralisをなして肺門からいる.神経は一部は無髄線維,一部は有髄線維からなっていて,神経叢のなかには多数の小さい神経節があり,神経はとくに気管支樹や血管の筋肉,および粘膜に分布している.

S.163   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る