Rauber Kopsch Band2. 170   

 甲状腺は固くて,粗なでこぼこをもっている.[甲状腺]被膜Capsula glandulae thyreoideaeは薄い膜で,甲状腺の表面を被っており,血管をともなう中隔を腺のなかに送っている.こうして大小の[甲状腺]小葉Lobuli glandulae thyreoideaeが作られる.腺を構成するものは密に相集まった小さい球状の小胞Follikelであって,これはどの側も閉じて添る嚢の形で,その壁は1層の丈の低い円柱上皮と繊細な基礎膜,およびそれらを取りかこむわずかな結合組織からできている.小胞を満たしている液体は蛋白を多く含み,いわゆるコロイド質をなしているが,またコレステリンの結晶が含まれていることもある(図222).

 血管:甲状腺には太い動脈,すなわち上下の甲状腺動脈がはいっている.ときには最下甲状腺動脈もあり,これらの枝は終動脈である.動脈は枝分れして豊富な動脈係蹄を作って個々の小胞をとりまいている.動脈に相当してよく発達した静脈がある.静脈は内頚静脈に入るが,最下甲状腺静脈はたいてい直接に左腕頭静脈か静脈角に達している(図223).

 甲状腺の神経は極めてたくさんある.神経は結局主として迷走神経と交感神経から来ている.またおそらく舌咽神経からも来ているようである.これらは腺の表面の被膜のなかで神経叢を作る.この神経叢は上心臓神経から来る上甲状腺神経Nn. thyreoidei craniales,中心臓神経から来る中甲状腺神経Nn. thyreoidei medii,鎖骨下神経叢と下頚神経節から来る下甲状腺神経N. thyreoideus caudalisによって作られている.さらに頚動脈神経叢や上・下甲状腺動脈神経叢からの枝,上喉頭神経,反回神経,迷走神経の上および中心臓枝からの枝,咽頭神経叢および舌下神経係蹄からの枝によってできている.最後に述べた舌下神経係蹄の枝は舌下神経の線維は含まないで迷走神経と交感神経の線維を導いている.

 甲状腺から来る上方のリンパ管は上深頚リンパ節にすすみ,下方のリンパ管は気管リンパ節と下深頚リンパ節に達している.左右の両葉のリンパ路は峡でたがいに合するが,両葉のリンパ路の交叉もみられる.さらに左右両葉の脈管のあいだに吻合がある.

 変異:副甲状腺Glandulae thyreoideae accessoriae, Nebenschilddrüsenの存在はまれではない.これに上・下・外側・中のものがある.特に興味があるのは中副甲状腺であって,とくに舌骨上副甲状腺Glandula accessoria suprahyoideaと呼ばれる.中副甲状腺は錐体葉から舌盲孔のところまで伸びていることがあり,たいていは舌骨の前を通り,まれには喉頭と気管の内壁を通っている.これは腫瘍や舌嚢腫をおこすことがある.

 

上皮小体Glandulae Parathyreoideae Beischilddrüsen(ザンドストレーム小体Saindströmsche Körperchen)

 上体小体は1個ないし4個;またはそれ以上ある小体で,各側において甲状腺の外側面と後面ヒ接しており,まれには甲状腺の左右両葉の内部にある.扁豆の形または卵形をしており,平均して8mmの長さをもち,特別な結合組織の被膜で包まれている.通常は左右にそれぞれ上下2つの小体があって上上皮小体・下上皮小体Glandula parathyreoidea cranialis et caudalis という.(日本人では上皮小体の4個あるものは51.9%,3個あるものは33.0%である(執行作弥,福岡医大誌17巻6号,1924).)

 上のものはほぼ輪状軟骨の下縁の高さで咽頭と甲状腺の両葉の後縁との間の溝にある(図225).下のものは同じ溝のなかで両葉の下端に近いところにある.

 これは典型的な位置であるがそのほかに位置の変化がいろいろあり,とりわけ下上皮小体について変化が多い.それがもっと外側に移っていることがあり,しばしば下甲状腺動脈と下喉頭神経の前にある.また甲状腺からかなり遠くに離れていることもあり,第8~第10の気管軟骨の高さにあることさえもあって,気管の前面についていることもときどきある.

 上皮小体の神経は甲状腺の被膜の神経叢から来ている (Braeucker).

 組織学的には(図229)上皮小体は上皮網胞索が相集り,また枝分れして組み合ったものからなっていて,その間をわずかな結合組織を伴ってかなり幅の広い多数の毛細管が走っている(図230).上皮小体の細胞は主細胞と色素好性細胞とに分けることができるが,主細胞の方がはるかに数が多い.

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最終更新日13/02/03

 

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