Rauber Kopsch Band2. 176   

 内側縁は上部と下部が凸をなし,中央部がへこんでおり,下内側かつ前方に向かっている.へこんでいるところに腎門Hilus renisがあり,そこを通って血管,神経,尿管が出入している.門をはいると腎洞Sinus renalisという深いくぼみがあって,そこは腎動静脈の枝,腎盂,脂肪組織で満たされている.腎門と腎洞とは腎実質からなる前唇後唇ventrale und dorsale Lippeによって境されている.両唇のうち後唇の方が前唇よりも幅が広くて,いっそう強く高まっている.また腎臓の後面は前面よりも幅が広くて,腎洞は程度の差が多少あるがかなり強く前方に向かっている.しかし腎門が後方に向かっていることもしばしばあり(Löfgren 1949),またごくまれであるが正しく内側方に向かっていることもある.

 大きさと重量:長さは平均11.5cm,幅5.5cm,厚さ3.7cmである.左腎・はやや長くて幅がせまく,右腎はやや短くて幅が広いのが普通である.

 Hoffmannは平均の大きさとして次の値をあげている.

 右腎 長さ11.2cm 幅5.6cm 厚さ3.8cm

 左腎 長さ11.8cm 幅5.45cm 厚さ3.5cm

 平均重量は120grから200 grの間である.左腎よりたいてい少しだけ重く,男の腎臓は女のより概してやや大きくて重い.腎臓の重量と体量との比はほぼ1:240である.比重は約1052である.(日本人の腎臓では右腎の長さ9.56cm,幅5.56cm,厚さ3.90cm,左腎の長さ9.89cm,幅5.41cm,厚さ4.25cmである.平均重量は100grから140grのあいだである.腎臓の重量と体重との比は約1=143である(安達島次,台湾医会誌24巻239号,1925).あるいは(岡睦, 京都医誌38巻,昭和16年下)成人の腎臓の平均重量は男では右132.1gr,左138.1gr,女では右121.7gr,左126.7grであり,また体重(kg)/腎重(gr)は男では右3.44,左3.61,女では右3.50,左3.72である.)

 局所解剖:I. 全身に対する位置関係では腎臓は腰部にあり,右腎は左腎より下方に達している(図166).

 II. 骨格との位置関係では腎臓は第12胸椎体の上縁から第3ないし第4腰椎体の上縁の間にある.腎門は第1腰椎体の高さに相当している.第12肋骨は腎臓の上を斜めに通りすぎるが,腎臓を折半するのではなくて,上1/3と下2/3の境のところを通るのである.Helmによると右腎は全例の2/3において左腎より下方にあるという.左右の腎臓の下端はたがいに離開して,いるから,上端は下端よりも正中線にかたよっており,それだけたがいに近寄っている.

 下端は脊柱からいっそう遠ざかつており,たがいに離開し多少とも腸骨稜に向かって近よっている.また上端よりも下端は幅がせまくて平たい.上端は正中線から4.5cm離れているが,下端は正中線からは6~9cm離れており,脊柱の側縁からは5~6cm離れている.外側縁は腰方形筋よりたいてい2~3cm外側につき出ている.

 III. 他の諸器官との関係としては腎臓の後方に横隔膜,腰方形筋腹横筋がある.右の腎門に接して下大静脈と十二指腸下行部とがある.左の腎門に接しては大動脈がある.上端にはそれぞれのがわの腎上体がのっており,これは前面と内側縁の上にもわずかながら達している.腎門には腎動静脈および神経があり,さらにリンパ節と尿管もあって,これらは脂肪組織で取り囲まれている.しかもそれらの位置関係は腎盂と尿管がいちばん後方にあり,それも尿管のほうが下にある.それに対して静脈は最も前方にあり,動脈はそれにまつわりついている神経とともに上述の両者のあいだを通ってはいっている.

 腎臓には次のような接触面を区別する.左右の腎臓の後面にはそれぞれ横隔面,腰方形筋面,肋骨面,腹横筋面Facles phrenica, quadrata, costalis, transversalisを分けるが,前面の場合と違ってそれを図によってあらわすことがむつかしい.

 右腎の前面には肝臓面,結腸結腸間膜面,十二指腸面Facles hepatica, colomesocolica, duodenalisがある.また上内側縁は腎上体面Facles suprarenalisをもっている.それに対して左腎の前面には胃面Facles gastrica,膵臓面Facles pancreatica,結腸結腸間膜面Facles colomesocolicaがあり,また脾面Facles lienalisが外側縁にも及んで存在し,上内側縁から前面に少しかかつて腎上体面Facles suprarenalisがある(図164, 237, 238).

 変異:腎臓には形,大きさ,位置についで多くの変化がみられる.ふつうよりも長くてほつそりとしていることがしばしばあり,またふつうより短くて丸くなっていることもある.ときおり一方が非常に小さくて,もう一方がそれに相当して大きくなっていることがある.片がわに腎臓がなくて,そのかわりに主として結合組織からできている結節が見られ,これに尿管がつながっていることがある.また1側の腎臓が尿管もろとも全く欠けていることもある.位置にもいろいろな変化があって1側または両側の腎臓が下方にあって小骨盤のなかに位置をしめて,ヘルニアの内容となっていることがある.もっとも多くみられるのはもともといくらか下方に達する傾向のある右腎がいっそう下方へ移る場合であって,このような腎臓を遊走腎Wanderniereという.腎臓がやや上方にあって第10肋骨にまで達していることがある.このようなことは左腎にいっそう多くみられる.また右腎がほとんど完全に肝臓によって被われていることもある.

S.176   

最終更新日13/02/03

 

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