Rauber Kopsch Band2. 178   

 線維被膜は腎門を通って腎洞の底まで続いている.そして腎洞の底において腎臓にはいる諸血管を包む結合組織の鞘と融合している.

3. 腎臓の表面にはこの他になお平滑筋をともなった薄い結合組織の膜,すなわち筋質膜Tunica muscularisが密着している.この膜は線維被膜とはゆるくつながり,腎臓の実質とはしっかりと着いている.筋質膜は腎洞のなかで腎杯の付着部のところまで続いている.

[図239]腎臓を被っているもの,模型図,横断(Gerota)

 腎臓の固定装置は次のものである.すなわち腹膜,脂肪嚢を含む腎臓の腹膜下組織,結腸,腎上体(特に子供において),腎臓に出入する血管の幹である.主な固定装置としては腹膜下の結合組織から生じたものと考えられる腹膜下筋膜Fascia subperitonaealisである.これは前腎筋膜後腎筋膜Fascia praerenalis, Fascia retrorenalisという2葉に分れて腎臓を前後から包んでいる.後腎筋膜は腎臓自身には付着しないで腰方形筋膜と腰筋膜の結合する線上に付着している.腹膜は腎臓の前を通りすぎるところでは,他の固定装置じしんを固定するのに役だっており,特にこれは左側において著しいことである.腎筋膜の両葉と腎臓とは短い索状,ないしは膜状の結合組織束でつながっている.この束が脂肪嚢を貫いて腎臓の線維被膜に移行している.左腎は右腎よりもいっそうよくその位置が固定されている.それはまず3重の腹膜葉が前腎筋膜を補強しており,さらに下行結腸が腎臓の外側縁にあってこれを支えているからである.

 腎筋膜の両葉(前と後の腎筋膜)は腎臓および腎上体の上方と磨側方だけでたがいにつながって,ここで壁側腹膜に移行している.後腎筋膜は内側では腰筋膜とつながり,前腎筋膜は内方で太い諸血管の上を越えているから,この2枚の筋膜によって作られる“腎臓の筋膜嚢”は内側と下方が開いている.

 腎臓の可動性についてはHasselwanderとG. Wetzelによって研究がなされた. Hasselwander(Anat. Hefte, 46. Bd.,1912, Z. Anat. Entw.,115. Bd.,1951)は生体では吸気のさいに腎臓の位置が下がり,呼気のさいに正常の位置にもどることをみいだした.直立位では腎臓は下にさがる.Wetzel(Anat. Anz., 41. Bd, ,1912)は子供の死体で腎臓の移動が体位に伴なっておこることを確かめた.直立位では腎臓が下方にさがり,その逆の体位では上方にもどる.また腎臓の前方と内側方への移動および,回転についても記載されている.

腎臓の実質(図240, 242)

 腎臓の実質には色,位置,構造,堅さを異にする2つの部分がある.すなわち皮質髄質Rinden-und Marksubstanzである(図240, 241).

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最終更新日13/02/03

 

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