Rauber Kopsch Band2. 200   

 b) 中層(268, 6)は薄くて,やや不規則な網状の層をなし,膀胱全体にひろがっている.この層の発達の程度には個体差がある.筋線維束は一般に横走しているが,膀胱の上部ではむしろ斜めの方向をもっていて,たがいに交叉している.膀胱底では横走する線維が広がりを増して,よく発達したかなり規則正しい層となっている.膀胱の出口のすぐ周りでは(男の場合には前立腺の体と直接につながっているが)この層は固くて幅の広い輪の形をして,開口部をとりまいている.この輪状の線維は膀胱括約筋M. sphincter vesicaeと名づけられて,そのほかの輪走する線維と直接につながっている.

 R. Heiss, Über den Sphincter vesicae internus. Arch. Anat. Phys.1915.

 c) 内層は粘膜下筋層とも呼ばれ,薄いものだが膀胱壁の全体に広がっている.内層も膀胱底において,特によく発達しており,なかでもすぐ次に述べる膀胱三角のところでよく発達していて,ここでは内層が強靱結合組織をもって粘膜とつながっている.左右の尿管の開口部のまわりでは内層の縦走線維が閉じた係蹄の形をなしている.

 筋層は収縮した膀胱では全体としてきわめて厚いが,かなりつよく広がるときはいくつかの場所,特に側方部においては粘膜を外から容易に認めうるほどはなはだ薄い層となる.

3. 粘膜と粘膜下組織(図269).粘膜はよく発達した粘膜下組織によって筋層とゆるくつながっており,そのために膀胱が空虚で収縮しているときには粘膜が大小のひだをなしている(図267).このひだには内層の縦走筋線維だけがある程度まで伴なっている.尿道への移行部の近くと膀胱三角とでは筋層とのつながりが密にできていて,そのために粘膜のひだが少ないか,または全く欠けている.だんだん膨脹するとすべてのひだがなくなってしまう.粘膜は軟かく平滑であり赤みがかった色をしている.そして尿管の開口部の周囲では小さな乳頭状の高まりをなし,移行上皮で被われている.この上皮の性状は尿管のものと一致している.粘膜のなかに小さい管状の粘液腺がある.これを膀胱三角腺Glandulae trigonalesという.また膀胱リンパ小節Lymphonoduri vesicaeが散在している.

 尿管の開口部と内尿道口では粘膜が直接に尿管と尿道の粘膜に続いている.膀胱底の前部には周囲よりも高まっている二等辺三角形の滑かな平面があり,その先端を前方にむけている.この部分では粘膜がよく発達した内層の縦走線維とかなりしっかりと着いていて,そのために膀胱が収縮していてもこの部分は粘膜のひだができないことが普通である.この部分を膀胱三角Trigonum vescicae, Blasendreieckと名づける(図267).膀胱三角の底の両隅には尿管ヒダPlicae uretericae, Ureterwülsteがある.これは尿管が膀胱にはいってくるためにできたものである.このヒダの上には尿管口Orificium ureterisが長めの円形の裂け目として開いている.膀胱三角の前端は不対の縦のたかまりを成している.これを膀胱垂Uvula vesicaeといい,尿道に向かっていろいろな長さだけのびており,あるいは尿道の後壁に達している.後者を尿道稜Crista urethralisという(図267).

 普通の発達のときにはこの膀胱垂が内尿道口の完全な閉鎖に寄与している.女の肪胱三角はいっそう小さくて,膀胱垂はわずかしかたかまっていない.

 膀胱の内面を被う移行上皮は腎盂や尿管の上皮と同じ細胞の形をしている.

膀胱の血管,リンパ管,神経

 上膀胱動脈は脾動脈の閉鎖しない部分から来ている.下膀胱動脈は内腸骨動脈の下方の枝から来ている.女では子宮動脈のいくつかの枝が膀胱にくる.静脈は膀胱の下部の周囲で輪状によく発達した膀胱静脈叢を作り,それから骨盤の諸静脈にはいっている.

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最終更新日13/02/03

 

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