Rauber Kopsch Band2. 219   

月経が初めて現われたときが性的に成熟したことを示すのである.ドイツではだいたい14才,もっと暖かい国では8才~12才においてすでに現われる.寒い地方では多くは18~20才で初めて現われる.(日本人で月経が初めておこるのは13才1ヵ月~15才5ヵ月,平均14才3ヵ月である(石塚清江・東京女医学会雑誌4巻,1934).)月経は更年期Wechseijahre(Klimakterium)をもって終るのであるが,これは45才~50才である.

 月経周期を次の各期に分けている.1. 月経期Menstruation(第1~4日目),2. 月経後期Postmenstruum(第5~12日目),3. 中間期Intervall(第12~17日目),4. 月経前期Praemenstruum(第17~28日目).これらの各期に応じて子宮の粘膜は一定の特徴ある変化を示している.月経の直後には粘膜は薄い.月経後期には卵胞ホルモンの影響を受けて粘膜は正常の厚さにかえり,中間期のあいだはその厚さを保っている.月経前期は主に黄体ホルモンの作用する時期で粘膜はだんだん厚くなり,5倍ないし8倍(10mmまで)になる.伺時に腺も長くなり,その走り方も独特なうねりをしており,上皮も丈の高い円柱形となる.粘膜は血液を豊富に受け入れ,月経前期の終りに近づくと多少とも強い出血が組織のなかにおこる.

[図291]子宮粘膜の周期的変化これと排卵ならびに黄体の形成とその退行との関係.数字は周期の日数を示す.月経の期附は灰色に塗つた柱で示してある.

 2回の月経のあいだ,そしてKnausによると(大多数のばあい)月経前15日目にグラーフ卵胞が破れて,成熟した卵が卵巣から出される(排卵).

 子宮の粘膜がその後にたどる運命は,飛びだした卵が受精して粘膜に宿るか(着床Nidation),あるいはそのようにならないかによって決まる.着床した場合には厚くなった子宮粘膜から母体がわの胚子被膜ができる.着床しないと粘膜はいちばん深い層のすぐ近くまで破壊される.そのとき子宮から粘膜の一部と粘液および血液の混じた液が流れて出る.当然このなかには着床しなかった卵も含まれている.この現象が月経である.母体がわの胚子被膜は出産後に胎児がわの被膜とともに後産Nachgeburtとして娩出される.母体がわの胚子被膜は剥げておちるので脱落膜Membranae deciduae(簡単にはDeciduae)と呼ばれている.

 月経前期には腺細胞は粘液とグリコーゲンを生産する.結合組織細胞もグリコーゲンをもっていて,これが上皮に似た円みをおびた細胞となる.この細胞から(卵の着床後に)脱落膜細胞ができる.筋層も強い変化を示し,その結合組織はいっそう疎になり,筋線維が増加する.

 妊娠のときには子宮の変化がいっそう高度にすすむのである.壁の大きさ・形・位置・厚さ・性状および内腔の形とその広さがこの場合は大いに変化する.子宮の重量は妊娠末期までに20~30倍に増加する.色は黒さを増し,筋肉は薯しく発達する.その場合には個個の筋線維は数を増すばかりでなく,驚くほど大きくなり,初めの長さの10倍にまで達する.

 子宮粘膜は腺もろともそれに劣らぬ変化をうける.粘膜は組織の増殖と腺の発達によってはなはだ厚くなる.卵の着床はSpeeによるとモルモツトでは次のようなぐあいにおこる.すなわち卵と子宮の結合組織との間にある上皮が消失して,卵は上皮下の結合組織に達するというのである.Peterは人のごく初期の着床卵を観察して同じような結論を得た.

S.219   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る