Rauber Kopsch Band2. 220   

卵が子宮粘膜の表てに接着すると,そこの上皮が消失する.そうして卵は上皮の下にある結合組織に達するのである.ついで卵は粘膜性の特別な被いで完全に包まれる.被膜のうちで卵と子宮腔との間にある部分を被包脱落膜Decidua capsularisといい,卵と子宮筋層の間にある部分を基底脱落膜Decidua basalisという.基底脱落膜からは胎盤が形成される.その他の部分の子宮粘膜はいわゆる壁側脱落膜Pecidua parietalisを作る.

 出産が終ると子宮はふたたび著しく小さくなり,6~10週間で前に述べたような初めの状態にかえる.筋線維は一部は脂肪分解を起し,一部はいっそう小さい線維が新生して,これによっておきかえられる.結合組織も退行変性して,その線維と細胞が大量に減少する.粘膜はかなり深いところまで剥がれるが,残存した部分からの増殖で完全にもとに復する.

 子供では子宮の頚は体よりも大きい.子宮底にあたる部分は幅が特に広くないし,ふくらみもたいしてないので体と明瞭に区別できない.綜状ヒダが相対的にははるかに長い.成長に伴なって子宮の上部はいっそう大きくなり,性的に成熟する時期になると上に記載した特徴をもつようになる.

 子宮の年令的変化についてはWaldeyerが次のように記している(Das Becken, Bonn 1899, S. 488).

「更年期になって生殖能力を失つた老女では子宮はそれまでとは異なった新しい形をとり,多くは普通の西洋ナシの形に最もよく似ている.子宮体は比較的に大きいま,であるが,その壁は薄くなる.そのさい内腔はいっそう大きくなり得る.体と頚との差がほぼ完全になくなり,頚は萎縮することによって外子宮ロに向かって著しく細くなる」

 子宮の形の変異と奇型が少なくない.このことは子宮と腔が左右の卵管の下方の続きであって,もともと対をなしていた左右の各半が1つに合してできたものであることから説明できる.したがって双角子宮とか重複子宮,あるいはなかに隔壁のある子宮などというものもたやすく理解される.

子宮の脈管と神経

 子宮は内腸骨動脈の枝である左右の子宮動脈によって養われている.この動脈は子宮傍結合組織のなかをうねりながら走り,左右のものがたがいに結合している.また左右ともそれぞれ卵巣動脈の1枝とつながっている.

 静脈はきわめてよく発達していて,子宮のなかでは全体として動脈の経過に沿っており,子宮腟静脈叢Plexus uterovaginalisという子宮の内と外にある密な静脈叢をなして,ついで幹に移行している.これらの幹は一部は近くにある骨盤の静脈叢とつながり,一部は直i接に内腸骨静脈と卵巣静脈に注いでいる.

 リンパ管は豊富に存在する.粘膜固有層に大きい網目をもったよく発達したリンパ網があり,この網から小さな幹がでて,筋層のリンパ叢および漿膜下の豊富なリンパ叢にすすんでいる.妊娠の時にはリンパ管は著しい広がりを示す.

 神経は腸骨動脈神経叢と卵巣動脈神経叢,およびI~IVの仙骨神経とから来ており,神経細胞の集団をもっている.これらの神経は子宮腔神経叢を作り,その中に子宮頚神経節(フランケンホイゼル神経節Frankenhäusersches Ganglion)がある.この神経節は子宮傍結合組織のなかで後腔円蓋の近くにあって,太い血管に密接している.これから出る神経線維の束は子宮筋層のなかで終末神経叢を作り,そこから出るもっとも細い線維がStöhrのいう神経終末細網を作っている.

 上皮と腺には神経線維の自由終末がある.卵管では神経がやはり上皮のなかまで追求できた.また卵管では神経細胞が粘膜固有層にあり,その一部は上皮のすぐ下に存在している.

 子宮頚神経節Ganglion cervicale uteriはPenitschka(Anat. Anz., 66. Bd.,1929)によるとひとかたまりのものでなくて,いくつかの大小の神経節とその間にある結合枝からできているという.その形,配置,大きさはきわめてさまざまである.またこの神経叢とつながって,独立した球形のパラガングリオンのみられることがしばしばである.個々の神経節ははなはだ細胞に富み,その神経細胞の数多くのもあが多核である.そのほかにクローム親性細胞も豊富にふくまれている.

5. 腟Vagina, Scheide(図275, 276, 284, 290, 292, 294)

 腟は筋性の膜でできており,前後に平たくて,拡張しうる管である.その上端部は子宮頚を取りかこみ,下端は外陰部とつづいており,そこで腟口Ostium vaginae, Scheidenmundをもって終わっている.

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最終更新日13/02/03

 

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