Rauber Kopsch Band2. 227   

これは前庭球Bulbi vestibuliとよばれて,静脈の密な網からできており,薄い結合組織性の膜で包まれている.前庭球の後端は丸みをおびているが,前方はとがっている.内側は粘膜に接し,外側は球海綿体筋に囲まれている.左右の前庭球は男の尿道海綿体に相当しており,そのつずきが尿道の上を越えて陰核亀頭に達しているが,この部分の静脈叢はいっそう小さくて密でないのである.この所で両側の静脈叢が相合し,また小陰唇の静脈をもうけ入れている.

大前庭腺Glandula vestibularis major (バルトリン腺Bartholinische Drüse)

(原文にはBartholinische Drüseとあるが,Bartholinsche Drüseが正しいとおもう.(小川鼎三))

 バルトリン腺は2つあって円形ないし卵円形の腺体をもち,赤みがかった黄色をしており,その大きさは大きなエンドウ豆,または小さなソラ豆くらいである(図295,11).

 この腺は男の尿道球腺に相当しており,腟口の後部の両がわで,腟口と球海綿体筋のあいだにある.また筋線維でぐるりと囲まれていることがしばしばある.この腺はたいてい前庭球の鈍い後端のところにはいりこんでいて,会陰横筋に接し,上下の尿生殖隔膜筋膜によって包まれている.導管は単一で1.5~2.0cmの長さがあり,処女膜またはその残存物のそばで小陰唇の内側面に開いている(図292, 294).大前庭腺は複合管状腺で,その構造は男の尿道球腺と同じである.

女性尿道Urethra feminina, weibliche Harnröhre(図275, 276, 292, 294)

 女性尿道は2.5~4cmの長さで,かなり太くて,その拡張性が大きい.膀胱の壁のなかをとおる壁内部Pars intramuralisとそのほかの部分,すなわち海綿体部Pars cavernosaを区別する.周りの壁が普通のときはたがいに密接していて,内腔は星形をしているが,径7~8mmにまで容易に広がることができる.膀胱の方に向かって軽くロート状に広がっている.尿道は腟の前壁に密接していて,これと固く結合している.

 外方の出口を外尿道口Orificium urethrae externumといい,腟前庭にあって,恥骨弓の後方で,陰核亀頭から2~3cm後方にあり,腟口に近く存在する.尿道のもっとも狭いところは外尿道口で幽る.

 尿道の壁は膀胱のすぐ下方でだけ独立していて,そこでは弾性に富む結合組織の外膜で外側が包まれている.それより下方では腟の壁と密着している.尿道の内側は白色がかった粘膜(粘膜下組織をもつ)で被われており,この粘膜は特に下端に近づくと縦走のひだをなしている.膀胱の方に近づくと粘膜は軟かくて海綿様になり,後壁には尿道稜Crista urethralisがある.

 粘膜のすぐ下には血管の網が発達していて,そのために断面では組織が海綿のような観を示し,これを尿道海綿体Corpus spongiosum urethraeという.これは平滑筋の束のなかにうずまっていてこの平滑筋が縦走および輪走する筋層Tunica muscularisとして尿道をとりまくのである.これらの筋層には弾性線維の束がからみあっていて,その外側に横紋筋の束が接している.横紋筋は上部では尿道を完全にとりかこんでいる.

 女性尿道は重層扁平上皮で被われ,これが上方は膀胱の上皮と,下部は腟の上皮と同じになっている.粘膜下組織には多数の小さな血管乳頭があり,また弾性成分も豊富で,リンパ球が混在している.尿道傍腺Glandulae paraurethralesは尿道の下部に比較的たくさんあり,分枝した管状の粘液腺である.この腺のかなり大きな集団が尿道傍管Ductus paraurethralisという特別な管をもって外尿道口のそばで外に開いている(図292, 294).

S.227   

最終更新日13/02/03

 

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