Rauber Kopsch Band2. 297   

 つまり神経叢というのは神経のあいだの複雑な形の結合である.これに対して単純な末梢牲の結合である吻合Anastomose,または結合Konjugationは太さのいろいろな末梢神経が別のそれと合することである.そのときにいくつかの特性が生じうる.すなわち--a)結合枝が1本の神経に属する線維を他の神経の路に送っている(図367, A).その線維が後者の中で中枢の方あるいは末梢の方に走っていることがあり,また両方向に走ることもある.この形を単純結合Conjugatio simplexと名づける.--b)その結合枝が両方の神経の線維を導いている.こうして相互結合Conjugatio mutuaが生ずる.その線維のすすむ方向がやはりあるいは中枢のがわに,あるいは末梢のがわに,あるいは両方向に進むものがあるわけで,その線維の列び方がいろいろ違ったものでありうる.その場合にはどこかある場所で交叉Decussationes, Kreuzungenが当然おこるはずである(図367, Bのxに示してある).そのような交叉は末梢神経系の中では幾度もみられるばかりでなく,中枢器官の中でもはなはだひろく存在する.これは特に中枢器官で体の両半に属する線維のあいだに正中面において起る重要な交叉についても同じことである.

 これらの大きな中枢性の交叉の意義は,それが運動性のものでも,知覚性のものでも,すこぶる重大なものにちがいない.これらの交叉は,中枢性の交連Kommissuren と同じく体の両半が密接に一体をなすためのものであることを意味し,体の両半の中枢と末梢とはこれらの交叉によってたがいに深い交わりをするのである.

B.神経学各論

I. 脊髄Medulla spinalis, Rückenmark

1.脊髄の形と位置

 脊髄は中枢神経系の脊椎部(図370380)であって,ほぼ円柱状をなし,前後の方向にややおされた形であり,特にその前面は平らであって,1本の管がその内部を貫ぬいていて,左右対称の形をなし,その前面から多数の神経束,すなわち運動性の根motorische Wurzelnを送りだし,その後面でも多数の神経束,すなわち知覚性の根sensible Wurzelnを取りいれており,かつ膜性の被膜に包まれて脊柱管の中にある.上方はすでに脳に属するところの延髄Medulla oblongata, verlängertes Markに直接に続いている.

 骨格との位置関係skeletotopischを云えば,環椎の上縁から第2腰椎,あるいは第2尾椎にまで達している.--脊髄の上端頚神経の第1対が出る所に一致していて,環椎の上縁の高さにある.

 脊髄はどの場所でも同じ幅,および同じ厚さというわけではない.特に目だつのは,脊髄に長く延びた紡錘形の,しかも左右対称的の著明なふくらみが2つ,すなわち上方の頚膨大Intumescentia cervicalis, Halsanschwellungと下方の腰膨大Intumescentia lumbalis, Lendenanschwellungとがあることで,これらは体肢にゆく太い神経Extremitätennervenが起始するところに当たっている.

 脊髄を8対の頚神経がでる頚部Pars cervicalis,12対の胸神経がでる胸部Pars thoracica,5対の腰神経がでる腰部Pars lumbalis,5対の仙骨神経および第1尾骨神経がでる仙骨部Pars sacralisとに区分する.仙骨部は脊髄円錐Conus medullarisを形成し,その尖端は終糸Filum terminale, Endfaden des Rückenmarkesに続いている(図375).

 上に述べた各部のなかがその部分がいく対の神経を出すかによってその数だけの上下に重なった部分からなるとされているのである.つまり脊髄は上下にならんだ多数の部分,すなわち分節Segmenteよりなり,その数は少なくとも31個ある.

 終糸Filum terminaleは硬膜の嚢のなかでは16 cm,その外では8cmの長さがある.硬膜の嚢の外にある部分はこの膜のつづきによって密接して包まれていて,この硬膜の部分は脊髄硬膜糸Filum durae matris spinalisをなし,その先がへらの形に広がって第2尾椎体の後面の骨膜に終わっている(図375).

S.297   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る