Rauber Kopsch Band2. 300   

 成人の脊髄の長さは,(日本人25(男17,女8)体についての研究によれば,脊髄の長さは平均男44.3cm,女42.8cm,重さ平均男25.5gr,女23.9grであった.(久保武:日本人の脊髄.東京医学会雑誌,17巻,53~70,111~127,143~160,1903).)上端から脊髄円錐の尖端まで計測すると,平均して男では45cm,女では41~42cm,新生児では14cmである.横径:その胸部の中央では横径が10mm,そこの矢状径は8mm;頚膨大の最も幅の広いところでは,その横径は13~14mmに達し,腰膨大では12mmに達するが,その矢状径はせいぜい1mmぐらい増すだけである.頚膨大より上方で,これと延髄との間では,その横径は11~12mmである.

 脊髄の重さは成人では27~28gr(新生児では3.2gr)である;これと脳の重さとの関係は1:48であり,脊髄の比重は1.034,その容積は33ccmである.

 局所解剖:骨格との関係(日本人50(男35,女15)体の研究によれば,脊髄円錐の下端の高さは第2腰椎にあるもの52%,第1腰椎にあるもの22%, 両者の間にあるもの18%であった.(狩谷慶喜:本邦成人の脊髄下界位に就て.北越医学会雑誌,52巻,325~342,1937) )では頚膨大が第2頚椎の高さに始まり,第2胸椎の高さで終る;その最も幅が広いところは第5一第6頚椎の高さにある.腰膨大は第10胸椎のあたりで始まって,第12胸椎の高さでその最大に達する.脊髄円錐のあまり尖つていない尖端Spitzeは,男では第1腰椎の下縁のあたりにあり,女ではさらにいくらか下方で第2腰椎の中央にまで達し,新生児ではなお下方にまで達して,第2あるいは第3腰椎の下縁である.

 脊髄の実質の硬さFestigkeitは大したものではないが,それにしても新鮮な脊髄はわれわれが想像する以上に強さと弾性をもっている.しかし死後はこの性質が間もなく消失して,柔軟になり,こわれ易くなる.

 脊髄には自然の弯曲が2つある3すなわち頚部の弯曲と胸部の弯曲とである.

 脊髄は脊柱管を完全に満たしているのではない(図379).3つの被膜である柔膜,クモ膜,硬膜のほかに,脊柱管を満たすものとして著しい量のクモ膜下のリンパ,豊富な静脈叢,さらに神経根の硬膜鞘に包まれた部分とこれに包まれていない部分および脂肪組織がある.

 腰部から下では神経根がたがいに密にくここにいて,急な傾斜を画いて下方に走っている.脊髄の下部とその周囲の神経根の集りが馬の尾の形を思い起させるので,馬尾Cauda equinaという名前がこの部分の全体に対してあたえられている(図370, 371, 375, 378).

2.脊髄の溝と索Furchen nnd Stränge

a) 溝Furchen(図373377, 381)

 前方の縦の裂け目,すなわち前正中裂Fissura mediana ventralisは正中線上にあって4mmの深さがあり,その底で広くなって,脊髄の上端と下端では浅くなる.この溝は軟膜のよく発達した突起である脊髄軟膜中隔Septum leptomeningicum spinaleを有っており,この突起から相当な太さの多数の血管が脊髄にあたえられる.

[図375]脊髄の下部と馬尾およびこの両者を取り巻く硬膜(1/3)後面(Quainより)

 硬膜の嚢を切り開いてその切り口をたがいに引き離してある;左側では神経根は全部そのままであるが,右側ではその神経根がL2から下方のものはそれらが硬膜を貫くところまで切りとってある,尾骨はその自然の場所に置いてあり,終糸および尾骨神経の尾骨に対する関係を示してある.a後正中溝;b, b終糸,右側に少し引っ張ってある;b'終糸,硬膜嚢(c, c, c, c)の外にある部分;d, d神経根が硬膜を貫く穴;e歯状靱帯;DX, DXII第10および第12胸神経;LIとLV第1および第5腰神経;SIとSV 第1および第5仙骨神経;CI 尾骨神経.

S.300   

最終更新日13/02/03

 

ページのトップへ戻る