Rauber Kopsch Band2. 320   

その線維の一部は錐体交叉をなして,錐体側索路となって他側の側索に達し,他の一部は交叉することなく錐体前索路となって下方に走る.

 錐体前索路は,人では前正中裂に接する前索の一部をなして,外側は前中間溝によって境されている.この線維の側枝および終枝は,前交連を通って他側の前柱の運動性の細胞に達するが,別の説によれば同側のこれに相当する細胞に達しているという.

 錐体前索路はC. Vまでしか見られないことが多く,時にはTh. VIまで,極めてまれに上部腰髄にまで達している.

2. 外側皮質脊髄路Tractus corticospinalis lateralis(錐体側索路Pyramiden-Seitenstrang-Bahn).これは錐体交叉から腰膨大の下端(第3~第4仙骨神経の高さ)にまで達しているが,その途中で次第に弱くなるのである.これは個々の線維が脊髄のいろいろの高さで終ることによる.側枝と終枝とはそのがわの前柱の運動性の細胞にいたる(図400, 404, 405).

 錐体側索路は上部胸髄の横断面では,側索の後方1/3の範囲内で卵円形あるいは軽く角ばつた領域を占め,この領域の後端は衡柱膠様質および後柱稜に達しているが,後柱の基部,ならびに脊髄の表面とは他の線維団によって隔てられている.胸髄の中央部より下方では,その領域は脊髄の表面に達している.第1頚神経の高さでは灰白質の外側面に達しているので網様体の中にある(図400, 405).そのさい上肢に対する線維が前外側に,下肢に対する線維が後内側にある.

 錐体路は動物によっては別の場所にある.ラット・マウス・リス・モルモツトでは後索の前端部にあり,フクロリスの類Pseudochirus,コモリグマ(コアラ)Phascolarctus (Pseudochirus, Phascolarctusはともに樹上に棲み,おもに果実を食べる有袋類であって,前肢の母指と示指が他の3本の指と対立して物をつかむに適している.(小川鼎三))では後索のもっているへこみにあり,ヒツジではブルダッハ索の中に遊離している.

3. 赤核脊髄路Tractus rubrospinalis(モナコフ束Monakows Bündel).(図405)

 これは錐体側索路の前方にあり,またその内部にもある.この線維群は反対側の赤核に始まり,腰髄にまで続いている.これは下方に向かって次第に弱くなり,その線維は前柱の運動性の細胞に終る.

4. 前庭脊髄路Tractus vestibulospinalis(ヘルドHeldsches Bündel).(図405)

 これは前庭神経外側核から起り,同側性に下りてきて脊髄の側索のなかを走っている.その線維は前柱の運動性の細胞に終る.

5. 網様体脊髄路Tractus reticulospinalis.(図405)

 その線維は被蓋網様核から来て,前索基礎束のなかにあり,やはり前柱の運動性の細胞に終る.

6. 内側縦束(後縦束) Tractus longitudinalis medialis, mediales(hinteres)Längsbündel.(図405) (J. N. A. では内側縦束(後縦束)はFasciculus longitudinalis medialisであるが,この本では原著に従いTractus longitudinalis medialisとする.(小川鼎三))

 これは上行性の線維と下行性の線維とを含み,同側 および反対側の後交連核Nucleus commissurae posteriorisと内側縦束核Nucleus tractus longitudinalis medialisにおこり,四丘体からの線維および前庭神経外側核からの多数の線維を受けとる.そして脊髄の範囲では前索のなかにあり,その線維は前柱の運動性の細胞に終る.

7. 視蓋脊髄路Tractus tectospinalis(Fasciculus sulcomarginalis[Held],レーヴェンタール束Löwenthalsches Bündel).

 この線維は四丘体(これは以前に視蓋Tectum opticum.と呼ばれた)から出て交叉し,また一部は交叉せずに脊髄に達し,ここでは前索のなかにあり,前柱の運動性の細胞に終る.これは視覚聴覚反射路optisch-akustische Reflexbahnである.

8. 室頂[]脊髄路Tractus fastigiospinalis, ventrales Randbtindel.(図405)

 これは他側の室頂核からおこり,脊髄のなかでは前索の表面のところにある.その線維は前柱の運動性の細胞に終る.

9. オリーブ脊髄路Tractus olivospinalis.(図405)

 オリーブ核から出るその線維は頚髄にまで達しているだけで,ここではヘルウェクの三稜路Helwegsche Dreikantenbahnの領域にある.

10. 視床脊髄路Tractus thalamospinalis.(図405)

 その線維は他側の視床から出る.脊髄のなかでは脊髄視床路の腹方部に含まれている.

b)上行と下行両性の伝導路で,脊髄神経節の細胞に始まるもの.

1. 後索Fasciculus dorsalis, Hinterstrang.

 これはその大部分が(知覚性の〉脊髄神経節の細胞の神経突起よりなり,その突起は(知覚性)の後根として脊髄に入る.

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最終更新日13/02/03

 

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