歴史的な偉大な解剖学書
成人男子の脳の平均重量は概算で1375gr,成人女子のそれは1245grである.女の脳の重さの最小値は800gr,男のそれは960grであった.(15才から80才以上までの)一男では1250gr以下の脳は異常に小さく,1550gr以上の脳は異常に大きいということができる.重さの最大値はいくらか不確実ではあるが,重さ1807gr,1861 gr,さらに2000 gr以上のものが報告されている.多くの女の脳がしばしば多くの男の脳を絶対的脳重で凌駕していることがあるのは当然考えられることである.
各個人の年令がもちろん脳重に主要な影響をもっている.R. Boydの計測によれば,平均脳重は7才までは急速に増加し,以後ゆっくりと増して男女両性とも20才の終りごろに成人について上述した平均値に達する.20~50才のあいだはその重さが増減を示さないのが普通であって,それ以後ゆっくりと重さが減りはじめ,高令になると平均値は男で1285gr,女で1130grとなる. Weisbachの計測によれば,脳重は20才と30才とのあいだで最大を示し,それからゆっくりと減少しはじめ,50才以後は急速に減少がおきる.
長頭の民族では平均脳重が,広頭の民族におけるよりもいくらか少い.Davisによれば,コーカサス人種(白人)は平均脳重が1335gr(男は1367 gr,女は1206gr)であるという.ヒンズー民族の脳重は男で1253gr,女で1133grにすぎない.体格が小さくて大きい脳重を示すのはシナ人(1332gr)である.これに続くものはサンドウィッチ島の住民で1303gr,マレー人が1266gr,ネイティブアメリカンが1266gr,アフリカ黒人が1244gr,オーストラリアおよびタスマニアの原住民が1185grである.
あらゆる民族において,平均脳重は(身長や体重と同じく)女の方がいくらか少い.男女の差は分化の程度がすすむとともに大きくなる.脳重における男女の差が最も少いものは,Davisによればアフリカ黒人とオーストラリア原住民であるという.
ヨーロッパの諸民族のなかでも,脳重に著しい相違がある.Weisbachによると,ドイツ・オーストリア国人は1314.5grであって,1368.31 grのチェコ人,特にスラブ人に劣つており,またマジャール人にも劣つている.イタリア人は1301.37grの平均脳重を示す. Davisによれば,平均脳重がドイツ人で1425gr,イギリス人で1346gr,フランス人は1280 grであるという.スウェーデン人の男450体の平均脳重はおよそ1399gr,女250体のそれは1248grである(G. Retzius).
有名人(男および女)の脳重を次にあげる.
年令 |
gr |
||
Cuvier |
(解剖学者) |
63 |
1861 |
Byron |
(詩人) |
36 |
1807 |
Dirichlet |
(数学者) |
54 |
1520 |
Gauß |
(数学者) |
78 |
1492 |
Schiller |
(詩人) |
46 |
1580(推定) |
Dante |
(詩人) |
56 |
1420(推定) |
Kant |
(哲学者) |
82 |
1600(推定) |
J. V. Liebig |
(化学者) |
70 |
1352 |
Sonja Kowalewski |
(女数学者) |
41 |
約1385 |
Bunsen |
(化学者) |
88 |
1295 |
Mommsen |
(史学者) |
86 |
1425 |
Menzel |
(画家) |
89 |
1298 |
Haeckel |
(動物学者) |
86 |
1575 |
Gambetta |
(フランスの政治家) |
44 |
1160 |
Antole France |
(著述者) |
80 |
1070 |
延髄は尖端を切りとった円錐の形をしていて,その底が橋に向い,他方その下端が脊髄に移行している.
その下方の境界は第1頚神経の上方の根線維が出るところにより,あるいは錐体交叉の下端によって定められる.背面での延髄の上方の境は菱形窩の髄条がそれとみなされる.延髄の長さは25mm,その下端での幅は10~11mm,その上端での幅は17~18 mmであり,また厚さは上方に向かって9mmから15mmに増す.
骨格との局所関係では,延髄は環椎の上縁から斜台の中央にまで延びており,ここでは両側の頚静脈結節のあいだにある.それゆえ延髄の軸は斜め上方に向かっている.脊髄へはゆるやかに移行するが,しかしときにはその移行部が急に角をなして曲がっていることがある.
最終更新日13/02/03