Rauber Kopsch Band2. 436   

 なおまた,かなりたくさんの短い伝導路が脊髄のなかで上行する性質をもっている.そういう短い伝導路がたとえば後索にあり,また前索および側索にもあって,Tractus cornumarginalesとよばれ,また特に後柱の付近,側索のいわゆる境界層およびリッソウエル束のなかにも広がっている.これらの短い伝導路はむしろ局部的な意義をもつことが明かであって,それは上行しつつ春髄のいろいろ違った高さをたがいに結合しているのである.

 脳神経の求心性線維の続き,すなわち三叉神経・前庭神経・舌咽神経・迷走神経の線維の脳内における伝導のぐあいが脊髄の後根線維のそれと同じようになっている.

 三叉神経では半月神経節がその脊髄神経節に相当するものである(図498).その細胞の末梢がわの突起は三叉神経の知覚性の幹をなし,中枢がわの突起は大部Portio majorとなって橋に入る.橋に入つたのちに三叉神経の知覚性の根線維はやはり上行枝と下行枝のそれぞれ1本に分れるが,その上行枝は下行枝よりも短くて,上方にすすんで三叉神経終止核のなかで散らばつてそこに終る.一方,長い方の下行枝は延髄の全長を貫いて頚髄の最下部まで達し,頚髄では後柱膠様質の上方の続きである三叉神経脊髄路核の外側にあり,到るところで側枝と≒終末枝を後柱膠様質にあたえている.

 三叉神経Nervus trigeminusの中心性伝導路(図498)は三叉神経終止核の細胞の神経突起よりなり,これらの突起は大部分が内弓状線維となって縫線を横切り,小部分のみは交叉しないままである.次いで両種の線維が集まって内側毛帯の背外側に特別な1団をなす.それより先きの経過の途中でこの線維団は次第に内側毛帯の背方の境に近づき,けっきょく四丘体のあたりで毛帯の一部となり,それといっしょに進んで視床外側核のなかの1つの小さい核に達する.それに続いているのが視床皮質路であって,これは中心後回の下部に達する.

 舌咽神経Nervus glossopharyngicusの上行性の伝導路(図500)は内神経節と外神経節の細胞からおこる中心がわの突起よりなる,これらの突起はいくつかに分れた小線維束をなして走り,膠様質に接して背内側に通り過ぎる.そのさい歯状核オリーブ路およびオリーブ小脳路の線維束群と交叉する(図462).次いで比較的短い上行枝とそれより長い方の下行枝に分れる.上行枝は灰白翼核Nucleus terminalis alae cinereae(=Nucl. terminalis n. IX., X. )のなかで枝分れし,下行枝は孤束となって下方に走る.孤束は膠様質の内側を走る線維群であって,これは迷走神経根の下行枝をもふくみ,下方に進むに従って次第に弱くなるが,それは孤束の神経線維が所々で分れでて膠様質と孤束核とに達し,そこにある神経細胞の周りに終るからである.

 これらの核の細胞からおこる神経突起は内弓状線維となって縫線に達し,ここでその大多数のものが交叉し,次いで白網様質の腹方部を上方に走る.そのさいこれらの線維は三叉神経の中心経路と同じように,次第に内側毛帯の背方面に近づき,三叉神経の中心線維に伴って上方に向かってすすむのである.そして内側毛帯とともに終いには視床外側核の小さい知覚性の核に達し,この核の神経細胞の周りでその終末分枝が広がって終る.そこの神経細胞から神経突起が始まり,これは舌咽神経の皮質下の続きとなって頭頂弁蓋た達するのである(図500).

 舌咽神経には中間神経N. intermedius(図499)が加わる.中間神経は膝神経節の細胞の中心がわの突起から来ると思われる.その末梢がわの突起はおそらく鼓索神経および舌神経に達し,舌の前2/3の部分に対する味覚線維をなすのであろう.

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最終更新日13/02/03

 

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