Rauber Kopsch Band2. 438   

 内耳神経Nervus statoacusticusは聴神経すなわち蝸牛神経N. cochleaeと前庭神経N. vestibuliとよりなり,それらの中心性伝導路ははなはだ違った走り方をレている.そして蝸牛神経の伝導路は側頭葉に達し,前庭神経のものは小脳に達するのである.

 蝸牛神経N. cochleae(図501)はラセン神経節の双極細胞からおこる中心がわの突起よりなり,その末梢がわの突起はコルチラセン器Organon spirale Cortiに入りそこで終る.蝸牛神経は橋の下界で脳の内部に入り,前庭神経は橋じしんで,しかも索状体の内側に入るが,蝸牛神経はこれに反して索状体の腹方かつ外側に入って,その線維はそこにある蝸牛神経腹側核Nucleus terminalis ventralis n. cochleaeと蝸牛神経背側核Nucleus terminalis dorsalis n. cochleaeとに終る(図462).蝸牛神経の根線維のいくつかは直接に下丘あるいは大脳皮質に達する.

[図501]蝸牛神経の核と伝導路 オレンジ色で示す(BechterewおよびR. Richterによる).

 赤は顔面神経および外転神経の根線維と視覚聴覚反射路(Tlm). Cc 後交連;cc 下丘皮質路;Cgm 内側膝状体核;Cr 索状体;gc (聴覚の)膝状体皮質路;Ncc下丘核;Ncr上丘核;Nd蝸牛神経背側核;Nll外側毛帯核;Nom 後脳オリーブ核;Nv 蝸牛神経腹側核;N. VI 外転神経核;N. VII. 顔面神経核;P 錐体束;P. I. 顔面神経根第1部;Sm 髄条;Tlm 内側縦束;x介在ニューロン.

 蝸牛神経腹側核の細胞の神経突起は直ちに内側に向い,橋の下半部では台形体を作り(図464),台形体は縫線で交叉する横走線維の集りである.これらの線維は,顔面神経核に側枝をあたえてすすみ,一部の線維は同側と反対側との後脳オリーブ核に達し,一部は後脳オリーブ核のそばを通り過ぎて被蓋の外面近くで外側毛帯となり,外側毛帯核が,その線維の一部を受けとる.そして残りの線維は上丘の中央を占める灰白質の細胞に側枝を出しつつ下丘に達する.上に述べたすべての核からは--側枝が分布する運動性の脳神経核は別として--上行性の神経突起が出て,これらの突起がみな集まったものが中心性の聴覚伝導路であって,これは台形体の高さで縫線において交叉したのちに外側毛帯の範囲をすすむのである.

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最終更新日13/02/03

 

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