Rauber Kopsch Band2. 482   

 脊柱管のなかを上行するときに副神経の根は非常にしばしば脊髄神経の後根と結合する.それは多くのばあいCIとの結合であり,まれにはCIIあるいはCIIIと結合する.

 外側枝は内側枝から分れる所で迷走神経の頚静脈神経節あるいは迷走神経そのものからの若干の細い枝を受け,これらの枝は外側枝のなかをさらに末梢に走る.ついで外側枝は外側下方かつ後方に向かってすすみ胸鎖乳突筋の内面に達して,この筋を貫きあるいはその内側面に沿ってさらにすすむ.そして外側枝はこの筋の後縁に現われたのちには外側頚部Regio lateralis colliを通って僧帽筋の前縁に達し,この筋の内面にいたり,これに運動性の枝をあたえている.外側枝は胸鎖乳突筋と交叉し,あるいはこれに接して通るあいだにこの筋に運動性の枝をあたえ,その枝のうち1本は必らず3頚神経の1と筋束の.あいだで結合している.この結合枝の線維は副神経の末梢部に進んでゆく.別の線維は副神経の幹に加わって中心の方に進むがその経路はまだよくわかっていない.また外側頚部では第3および第4頚神経から出る枝が副神経と結合する.副神経はもともと純粋な運動性の神経であるが,いろいろな場所で,それはすでにおそらくは上部の頚神経の後根から・頚静脈神経節のところで迷走神経から・第3および第4頚神経の前枝から知覚性の線維を混じ得るのである.内側枝の線維は迷走神経の咽頭枝と喉頭枝の経路に,また心臓枝のなかに移行する.

XII.舌下神経N. hypoglossus(図511, 524, 525, 527, 536)

 舌下神経は舌下神経核からおこり,10本ないし15本の根糸をもって延髄の前外側溝で表面にでる.これらの根糸は集まってかなり大きな通常2本の束をなし,この2束が別々にあるいは1つに合して硬膜の嚢をでて,1つの硬膜鞘に包まれて,舌下神経管を通り頭蓋の外に達する.

 舌下神経管に入るところで舌下神経は後頭静脈洞の静脈と結合している静脈冠Venenkranzに取りまかれる.これを舌下神経管静脈網Rete canalis n. hypoglossiという.頭蓋底の外では舌下神経はまず迷走神経の内側かつ後方にあるが,節状神経節のところでは結合組織によって迷走神経とかたく着きながら,この神経の外側面に移ってゆき,茎突舌骨筋と顎二腹筋の後腹との内側面に沿って下方に走り,次いで下方に凸のかるい弓を画いて曲り前方にすすみ(舌下神経弓Arcus hypoglossi),顎舌骨筋に被われて舌骨舌筋の外面に接してとおり,舌の内部に放散する.

 舌下神経は下行に当たって内頚静脈および内頚動脈と次のような関係にある.すなわち,両血管のあいだを貫くかあるいは後方から両血管の外側に達するのである.次いで外頚動脈の外面および顔面静脈の頚部の内面と交叉し,両者のあいだを前方に通りぬける.

 舌下神経の下行部は迷走神経,第1から第3までの頚神経の前枝および交感神経の上頚神経節と結合するので,舌下神経はもともと運動性であったのが,生理的作用の違う線維を含むようになる.

a)舌下神経と他の神経との結合.

1. 上頚神経節との交通枝Ramus communicans cum ganglio cervicali craniali.

 この枝は舌下神経管のすぐ外で舌下神経から出て上頚神経節に達している.

2. 迷走神経の節状神経節との交通枝Ramus communicans cum ganglio nodoso n. vagi.これを通って迷走神経の線維もまた舌下神経に達している.

3. 1頚神経係蹄との交通枝Ramus commullicans cum ansa cervicali prima.これは第1および第2頚神経の前枝の線維よりなるかなり大きい枝である.この線維の一部は舌下神経のなかを中枢の方向に走り,その大部分がふたたび舌下神経を離れて前頭直筋と頭長筋とに運動性の枝をあたえるが,少部分は舌下神経のなかにとどまっている.この結合枝の線維の半分以上は末梢の方向に舌下神経の一部としてすすみ,舌下神経下行枝Ramus descendens n. hypoglossiの形成に与かり,この枝をへてその線維をオトガイ舌骨筋にまで送っている.

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最終更新日13/02/03

 

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