Rauber Kopsch Band2.511   

1. 近くの手根靱帯装置へ分布する細い枝(関節枝Rami articulares);--2. 掌側および背側骨間筋のすべてに対してそれぞれ1本ずつの骨間筋枝Ramus interosseus;3. 第3と第4の虫様筋にいたる枝;--4. 短母指屈筋の深頭と母指内転筋への枝(2. から4. までが尺骨神経の深枝の弓状部から出る筋枝である);--5. 中手骨間隙の背側面に達する穿通枝Rami perforantes,これは背側前腕骨間神経の終枝と結合していることがあり,中手骨の小頭のところまで達する.

 変異:日本人においてHirosawa(1931)は123本の上肢のうちで3回だけかなり太い枝が背側神経束あるいは橈骨神経の近位部から出て尺骨神経に達しているのを見た.

4. 尺側前腕皮神経N. cutaneus antebrachii ulnaris(図541, 542, 547, 548)

 これは腕神経叢の(下方の)尺側神経索から発して,腋窩静脈と上腕静脈および正中神経に伴って走り,上腕の中央で上腕筋膜の尺側皮静脈裂孔Hiatus basilicusに達し,この孔を通って皮膚に達する.ここで,あるいはそれよりわずかに上方で,その2終枝に分れる:その1本は掌側枝Ramus volarisであって,これは前腕の掌側面を,他の1本は尺側枝Ramus ulnarisで,これは前腕の内側面を走り,手関節のあたりまで達する.

1. この神経は近位部で1本あるいはそれ以上の上腕皮枝Rami cutanei brachiiを上腕二頭筋を被う上腕の皮膚に送っている.

2. 終枝の1つである掌側枝Ramus volarisは初めは尺側皮静脈の外側面にあり,次いで多くのばあいこの静脈に被われて尺側正中皮静脈あるいは肘正中皮静脈と交叉し,前腕の掌側面を手関節のところまで広がっている.その枝の1本がときとして尺骨神経の手掌枝のだす1穿通枝と結合する.

3. いま1つは尺側枝Ramus ulnarisであって,前者よりいっそう細くて,尺側皮静脈の内側面に接して遠位の方向にすすみ,その終枝は前腕の内側縁を廻って前腕の背側面の内側部にいたる.その枝のうち最初にでるものはすでに尺側上顆の上方で分れており,しばしば尺側上腕皮神経の終枝の1つと結合する.1本の小枝が尺骨神経の背側枝と結合し,他の1本が尺側前腕皮神経じしんの掌側枝と結合することがまれではない.

5. 尺側上腕皮神経N. cutaneus brachii ulnaris (図541, 547, 548)

 これは腕神経叢の(下方の)尺側神経索からでて,腋窩では初めに腋窩静脈の背方にあり,次いでその内側面に接し,Th II(いっそうまれにはTh IあるいはTh III)からの外側皮枝といろいろなぐあいに結合する.この外側皮枝が特に肋間上腕神経N. intercostobrachialisとよばれるものである.両神経は合して1本の小幹をなすか,あるいは分れたまま進みつづけるか,または肋間上腕神経が主な神経となっていて,尺側上腕皮神経はそれとは分れて走る細い枝であったり,あるいは細い1結合枝にすぎないことがある.

 その結合枝,あるいは肋間上腕神経N. intercostobrachialisは腋窩で次の枝を出している:

1. 腋窩の皮膚に分布する枝,2. これに続く上腕の皮膚にいたる枝.

 尺側上腕皮神経の続きは上腕の中央の高さでその内側面において上腕筋膜を貫き,下方に進んで尺側上顆ならぴに肘頭のあたりに達する.

6. 橈骨神経N. radialis(図537, 541544, 546548)

 橈骨神経は腕神経叢の背側神経索の続きであって,腕神経叢の最も太い枝である正中神経とほとんど同じ太さである.橈骨神経は間もなく尺側上腕二頭筋溝の中を走る神経や血管から分れて,上腕動脈の背方,大円筋の腱と広背筋の腱の前方をへて,上腕深動脈といっしょに上腕の背側面にいたり,上腕三頭筋の長頭と橈側頭とに被われて上腕骨の橈骨神経溝のなかを走り上腕の外側面に達する.そして上腕の下方1/3の初まりのところで腕橈骨筋の起始を貫き,この筋と上腕筋とのあいだにある隙間の深部に達する.

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最終更新日13/02/03

 

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