Rauber Kopsch Band2.707   

 Schiefferdecker(Biol. Centralbl., 37. Bd.,1917およびZoologica, 27. Bd.,1922)は形態学的な分泌過程と発生の関係からホロクリン腺holokrine Drüsen(脂腺)とメロクリン腺merokrine Drüsen(大および小汗腺)を区別している.そして後者にはさらに次の2つが区別される:a)メロクリン-アポクリン腺merokrine-apokrine Drüsen(大汗腺と乳腺),b)メロクリン-エククリン腺merolerine-ekkrine Drüsen(小汗腺).アポクリン腺においては分泌のさいに細胞の上端部が離れ落ちる.これに対してエククリン腺の細胞は無傷の表面において分泌物を外にだすのである.

a)小汗腺Glandulae sudoriferae minores(図725, 727, 729, 745, 753, 754, 770, 771)

 これが普通の汗腺であって,枝分れのない長い管であり,分泌をする糸球状部すなわち汗腺体Corpus glandulae sudoriferaeと,汗腺管Ductus sudoriferという導管と,汗口Porus sudoriferという開口が区別される.汗腺は網状層の深層か,さもなければ皮下組織の最上層にある.

 汗腺は全身の皮膚に分布しており,存在しないのは亀頭と包皮内面だけである.その全数は約200万,汗口の総横断面積は38 cm2である.その分布が最も密なところは手掌と足底で,間隔が最もひろいのは胴の背面である.

 Kruaseによると1 cm2あたりの汗腺数は:手掌373,足底366,手背203,頚178,額172,前腕の屈側157,胸と腹155,前腕の伸側149,足背126,上および下腿(内側)79,頬75,項・背・臀部57である.Hörschelmannによると数字の開きは上述のものより小さいが,腺の数じしんはこれより多い:1cm2に足背では641,手掌では1111.(皮膚付属器の数量的研究には岡島敬治およびその門下の人々のなした多数の研究がある.その1つとして,神山清静(Fol. anat. jap.15,1937)の統計的研究によれば,日本人の汗腺の数は20~30才と30~60才ではそれぞれ1cm2あたり次の通り.頭頂部325,194.額424, 251.頚169,160.胸136,122.腹213,146.背199,148.臀部241,153.上腕屈側239,183.同伸側231,153.前腕屈側280,172.同伸側264,174.大腿内側183,125.同外側254,178.下腿伸側191,148.同屈側222,135.また谷口虎年は「人体各部における汗腺の分布」(科学4,1934)において汗口数が年令の増加とともに減少すること,この減少が体表面積の増加に帰せられるらしいことなどを述べ,各人種の簡単な比較をも載せている.)

 汗腺体は丸い形か,少し圧平された形で,半透明で帯黄色またはそれに少し赤味を加えた色をしている.腺体の直径は体部位によって非常に異なっており,ふつう0.3~0.4mmであるが,小さいのは0.06mmしかないものもある.その構造は1本の管がウネウネと何度もまがったものである(図753).管の壁は単層の円柱細胞でできている.これらの上皮細胞は脂肪小滴と色素顆粒を含んでいる.上皮細胞は1枚の繊細な基礎膜の上にのっており,この基礎膜はオルッェインまたはレゾルシン-フクシンでよく染まる.強く発達した糸球状腺では上皮細胞と基礎膜とのあいだに1層の縦走する平滑筋線維(図754)がある.また基礎膜の外側には結合組織性の被膜がある.

 汗腺管Ductus sudorifer(図753)はすでに糸球の中ではじまり,軽くまがりながら(時にはまた鋭く屈曲することもあって)真皮をたいてい垂直に貫いて上行し(図753, 770),さらに表皮を貫通する.そのさい皮膚小稜の存在するところでは,その2つの乳頭列のあいだで表皮を貫いて,ロート状にひろがった口をもって皮膚小稜の頂に開口する(図725).小稜のあいだの皮膚小溝には開口しない.かくして分泌物である汗Sudor, Schweißの流出や発散がそれだけたやすく起るようになっているのである.表皮のなかでは汗腺管がかなり強くラセン状に,すなわちコルク栓抜きのように巻いており,その2~16回転を数えることができる(図727, 753).これと同様のラセン状回転は腺管の全長にわたってもみられ,いずれも限られたせまい場所の中で高度の長さの成長が起るということがその原因をなしている.

 すべての汗腺管は縦の方向にのびた形の核をもつ1層の結合組織性被膜と1枚の基底膜をもっている.上皮は2をなしている.外層は縦走筋層のつづきで,内層は腺細胞層のつづきである.内層の扁平な細胞は強い小皮縁Kutikularsaumをもっており,この小皮縁は高さ(汗口からの深さ)によって異なった形状をしている(Heynold) (図754). Hoepke, H., Z. Anat. Entw.-gesch.,87. Bd.,1928.

 血管:汗腺体に分布する血管は皮膚動脈から特別の枝をうけており,この枝はかこのような叢をつくって糸球のまわりにまつわりつき,さらに糸球の深部にも入りこんで,すべての迂曲した管をとりまいている.この動脈叢から起る毛細管網は,汗腺管の毛細管網だけによって皮膚の表層の毛細管網と結合している(図729).

 神経:汗腺体には多数の神経線維が来ており,結合組織性被膜のなかで細かい線維からなる豊富な神経叢をつくっている.

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最終更新日10/08/31

 

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