言語 language

最終更新日:2002年05月09日 船戸和弥のホームページ

哲学事典(森 宏一編集、青木書店 1981増補版)から引用

 人間が活動するさいに、ものごとを認識し、たがいに、考え・意志をとりかわす機能を果たす、客観的に存在している、その意味で物質的な特殊な記号の体系である。これには、人間の歴史的経過のうちで自然発生的に形づくられて、日常使用する<自然言語(natural language)>と、人工的につくられる<人工言語(artificial l.)>とがある。言語はパブロフが明らかにしたように、<第二信号系>として人間に特有のものである。それは、労働によって人間が猿から分かれ出てきた過程で、労働の必要性から生まれてきた社会的産物である。これによってひとびとはたがいに、考え・意志を伝えあえるし、また自分自身の意識をかたちづくることができる。言語と意識とは互いにむすびあい、切り離すことができない。意識の内容は、言語において、語いや文法的きまりから成っている。したがって、言語の発達は、また意識の明確化・発展でもある。言語はその発展過程で文字をもつくりだす。言語、そして文字の形成は、ともに思考の発達を促進し、抽象的思考をおこない、一般的概念をかたちづくることができ、また先行する世代の経験や知識や思想を、つぎの世代に伝えることができる。思考は言語によって発達させられるが、思考の従う法則と言語の文法とは同一ではなく、それぞれ独自の領域をつくる。同一の言語が一定の社会に用いられるとき、そこの社会集団のあいだの、したがってその成員のあいだの相互の交際のありさまから、異なった生活様式がつくられるものであるが、その社会も基本的には生産によって各集団は結び合わされているので、相互の交通の必要性から言語そのものには共通性が維持され、各集団に特殊用語が生じても、そこには言語の階級性は認められない。<人工言語>については、これは数学的、物理学的、または論理学的なシンボル(数・文字・記号)として、それぞれの分野でその<人工言語>を使用する規則、つまり法則があって運用される。しかし、この言語は<自然言語>に対しては副次的なものであり、これをもって人間活動がすべて規定されるかのように絶対化することは出来ない。