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いままでに最もよく研究されたのはコーカシア人種indoeuropaische Volkerfamilieである.したがってこの人種がわれわれの述べる人間の解剖学の基礎をなしている.

 それに次いでは日本人が解剖学的に最も深く研究されている.

 また系統解剖学systematische Anatomieと局所解剖学topographische Anatomieを区別しなければならい.前者は身体をまず全体としてとりあつかい,ついで体を構成する種々の器官系にしたがって取り扱うのである.そのさい,人体が動物の系統の中で如何なる位置を占めるかということも研究されなければならいので,系統解剖学という名前は2つの方向からみて正しいわけである.系統解剖学はまた記載解剖学deskriptiveAnatomieともいう.

 それに対して,局所解剖学は体のいろいろの領域において,諸器官および器官の諸部分が如何ように隣り合わせているかを研究する.その場合,系統解剖学の知識は前もって得られていると仮定するのである.系統解剖学はさしあたって,実用上の目的に持たず,純粋な学間上の目的を持つのに反して,局所解剖学の目的は多くは医者としての必要なことに向けられている.局所解剖学がもっぱら外科的な要求にもとづく場合は,外科的解剖学chirurgische Anatomieとよぶのである.

 体質学Konstitutionslehreはいろいろと異なる体質の型の外部的なあらわれを記載することを,その基礎としている.

 自然の探求や,また医者としての思考と行為のみが解剖学を必要とするのではなくて,人間はだれでも当然,じぶんの体について,ある程度の知識と離解を持つことがはなはだ大切に違いない.この役目を果たすのが通俗解剖学Populäre Anatomieである.

 また芸術家は鉱物,植物,動物および人間を形に表わす限りは,解剖学上の知識と理解を充分に持っていなければならない.もっとも芸術家はそれらの体の表面に現われるところを模すればよいのである.ところが刻々と変化する表面の形を正しくつかんで,それを理解することは決してたやすい仕事ではない.難しい表面の形を正確に知るためには,体の個々の部分や個々の器官系でなく,全体Gesamtkörperの知識が特にだいじである.芸術家の目的にそうことを役目としているような解剖学上の記載を集めたものが芸術家のための解剖学Anatomie für Künstlerあるいは造形解剖学plastische Anatomieである.

 前に終止形の解剖学ということを述べたが,それに加えて,なお乳児期,小児期,老人期の解剖学というような大切な成長段階についての特別な解剖学上の記載もあることを見落としてはならない.

 生命を有するもの全体についての科学すなわち生物学Biologieに対する解剖学の関係は次の表によって解明と外観があたえられる.

生物学=形態学+生理学(機能学)

解剖学および発生学

個体発生および系統発生

植物解剖学および動物解剖学

人間の解剖学および動物の解剖学

Biologie=Morphologic+Physiologie(Ergologie)

Anatomie    Entwicklungsgeschichte

Ontogenie    Phylogenie

Phytotomie Zootomie    Keimesgeschichte       Stammesgeschichte

Anatomie des Menschen   Anatomie der Tiere

 上に述べたことからして,われわれが如何なる目的で解剖学を勉強するかを推測するのは困難であるまい.それには学間的,実用的,および道徳的な理由があるのである.

 初学者によって第2の点が特に重要視されることが少なくない.その考え方こそは誤りであって,極力避けなければならない.もしもこの世にあるいは何か一つの自然物が純粋に学間的な立場から充分に研究される価置があるとするならば,それは人間の体である.

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最終更新日10/09/01

 

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