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 接合質の特別な一種であるところの閉鎖堤Schlusleistenは多数の上皮(それも諸所の粘膜の円柱上皮や移行上皮が主である)にみられるもので,これは表皮細胞の表面にむかった端のところを結合していて,表の方からみると閉鎖堤網Schlusleistennetzという網状の像をしめすのである.

 細胞間橋は一つの細胞から他の細胞につづく原形質の突起と考える人があり,あるいは細胞膜の突起とする人もあり,またその両方だという人もある.その決定はむつかしい.もしもそれが原形質の突起だとすると,そしてこの考えは動物細胞は普通に細胞膜を欠くので確実性を有するのであるが,全身にわたる大きい細胞団の原形質が無数の突起でたがいにつづいているという重大なことになる.すでに胎児おいてこういう突起の存在が証せられる.すなわち早くから現われるもので,細胞相互のあいだを固く着けておくためのものである.他方ではまた細胞間隙Interzellularluckenという管が残っていて,そこを細胞間液interzellulare Flussigkeit(上皮リンパEpithellymphe)という液が流動していて,これが上皮の栄養にはなはだ大きい意味をもつのである.遊走細胞もこの管を通って,上皮の表面に達する.

[図48]サンショウウォの腸上皮細胞における粘液形成.Aは小さい粘液顆粒をもつ細胞.Bは大きい粘液顆粒をもつ細胞.(Heidenhain, Plasma und Zelle. Bd. Iによる.)

[図49]家兎の臍胱より得た移行上皮細胞.×300. 左上:表層の幅の広い平らな細胞で2つの核を有し,下面に鋭く突出した明瞭な縁とへこみをもっている.下:それより深い層に属する2つの西洋梨型の細胞.右上:西洋梨型の細胞が1個,表層の細胞がもつへこみのかなにはまっている.(Kleinに基づいてSchäferが描いたものよりとった.)

[図50]尿管の移行上皮 ヒトの尿管粘膜の横断図.×500.

[図51]閉鎖堤網の模式図(Stöhr sen, による.)

[図52]細胞間橋 ヒトの表皮の切片.×1000. 細胞間隙が広くなっている.そのために細胞間橋のランヴィエ小節Ranviersche Knötchenが存在しない.*は核小体.

 上皮層形成:すでに述べたごとく上皮細胞が集まって,一とづづきの被い,すなわち上皮を形成している.重なり合っている細胞層の数によって

 a)単層上皮einfaches (einschichtiges) Epithel

 b)重層上皮geschichtetes (mehrschichtiges) Epithel

が区別される.

 理論的に云えば,この二つの型は上述の4種の上皮細胞のいずれにも存在しうるはずであるが,しかし単層の移行上皮というものはない.だからわれわれは次の7種の上皮を見ることができる.

1. 単層扁平上皮einfaches(einshichtiges)PlatternEpithel:その例としては網膜の色素上皮,肺胞の呼吸上皮,精巣網の上皮,胸膜や腹膜の上皮(図39, 53).

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最終更新日13/02/03

 

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