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2. 重層扁平上皮geschichtetes (mehrschichtiges) Plattern-Epithel:これに属するのはまず表皮,なお口腔,食道,声帯ヒダの自由縁,腟,角膜などの上皮である(図54, 55).

 ここで注意するべきは,最も表面の細胞層のみが扁平な細胞からできていることである.最下の細胞層をなすものは円柱状であり,それに次いで多角形の細胞が集まっている.これは隣接する細胞から圧をうけて多角形となっている.表面の近くにある細胞は扁平であるが,最も表層にあるものだけが薄くて小鱗状である.細胞の形に応じて核の形および位置も変化する.核は下部の円柱細胞層では楕円に近い形であり,中くらいの層ではほぼ球形を呈し,上部の層では平たくなっている.

3. 単層円柱上皮einfaches Zylinder-Epithel:腸間では噴門から肛門までの上皮がそれであり,数多くの腺の導管や腺体(甲状腺,腎臓,前立腺,精嚢腺),脊髄の中心管,正看の上皮がこれがこれに属する(図56).

4. 重層円柱上皮geschichtetes Zylinder-Epithel:眼瞼結膜,大きい腺の導管の主幹,男の尿道,精巣上体管にこの種の上皮がある.

5. 単層絨毛上皮einfaches Flimmer-Epithel:気管支の細い枝,卵管,子宮,副鼻腔,精巣上体頭の管がこの種の上皮をもっている.

6. 重層絨毛上皮geschichtetes Flimmer-Epithel:呼吸道では鼻腔からはじまって気管支の細い枝まで,ただし声帯ヒダの自由縁をのぞく.そのほかに血管や鼻涙管がこの種の上皮で被われている(図57).

7. 重層移行上皮geschichtetes Übergangs-Epithel:これは腎盂,尿管,臍胱にある(図50).

 上皮細胞の表面および内部にみられる分化äußereund innerre Differenzierungenははなはだしく多様である.それを全部述べることはくたびれ損の傾きがあるから,その大体を簡単に述べて,違った形のものが如何に豊富であるかを,ある程度わからせるとしよう.

 上皮細胞の表面の分化のなかで,われわれはすでに細胞間橋と絨毛については述べたものである.動く付属物すなわち運動毛Kinocilienのほかに時として細胞の自由面に動かない毛すなわち不動毛Stereocilienがあるとされている.付属物のいま一つ別の型のものは精巣上体管などの細胞の方面にある細い毛の束であって,これは分泌物を導くはたらきをもっている(第II巻を参照のこと).

 中心鞭毛装置Zentralgeißelapparatは精細な多くは短い1本の毛が細胞の自由面から外にむかって突出していて,鞭毛Geißelあるいは外糸Außenfadenとよばれ,その細胞の方面のすぐ下に多くは双心子Diplosomaの形で中心小体があり,なおこの中心小体から細胞の内部にむかって細い糸が集まって束をなしてすすんでいる.これらを合わせて中心鞭毛装置という.この鞭毛が動くかどうかはいままでまだ分かっていないが,精子細胞から最初に軸糸ができはじめる時と形態学的に似てはいる.しかしおそらくこの鞭毛は感覚器であろう.あるいは退化した構造物であろうか.というのはヤツメウナギの原腎の細胞にはかなり丈夫な鞭毛を1本ずつもつものがみられるのある.

[図53]ヒトの大網における腹膜上皮 細胞の境界を銀によってあらわしてある.

[図54]重層扁平上皮 ヒトの角膜上皮の切片.×500

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最終更新日13/02/03

 

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