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 試薬に対する関係: 弾性線維は酸およびアルカリに対してはなはだ抵抗が強い.しかしトリプシンによって徐々に全く溶けてしまう.水の中では60時間煮ても溶けない.圧を加えて30時間130°で煮ると弾性組織は特別な化学性状をもつ褐色の塊に変わる.

 固定結合組織細胞fixe Bindegewebszellenはまた線維細胞fibrocytenあるいは線維芽細胞Fibroblastenともよばえ,その細胞体は扁平で,平らにひきのばされて尖った輪郭を示し,平板状あるいは翼状の突起をもってその突起が他の細胞の突起とつづいている.原形質は網状の配置を示して,小さい顆粒がわずかに含まれている.突起の縁のところは極端に細かくて薄いので,切片標本ではこの細胞の輪郭がほとんど決定できない.中心小体ももちろん存在している.内網装置はPfuhl (Z. Anato. Entw.,99. Bd. )によりはなはだ明瞭に染めだされた.

 核はかなり大きくて,扁平で楕円に近い形をなし,数多くの細かい淡色のクロマチン顆粒と明瞭な核膜と1個あるいは数個の核小体をもっている.

 これは結合組織の線維をつくるもので,高度に分化した細胞である.Maximowはその増殖によって同じ種類の細胞のみができるといい,Verattiは条件によっては之から形質細胞が生ずるという.またv. Möllendorff (Münch. med. Wochenschr.,1926, Z. Zellforsch. .,12. Bd.,1931)によると断裂細胞そのほかの細胞も之からできるという.色素を多量にあたえたときに限って,固定結合組織細胞はその色素の一部を自らの体内にとりこむが,それも細かい顆粒の形でみられるのみである.

 遊走細胞Wandcrellen (Haemocyten) (図65)は形状および外観がいろいろである.原形質をわずかしかもたない小さい球形の細胞で,その円い核が血液のリンパ球の核のように濃密な作りを示しているものがあるかとおもえば,それより図体が大きくて,細胞体が良く発達しているのがある.おそらく上述の小さい遊走細胞がさらに発達してこれになったとおもわれるのである.遊走細胞はアメーバ様の運動を示し,その核は球形,馬蹄形あるいは分葉形である.

 顆粒をもつ細胞granulierte Zellenとしては次の3型がある:

1.肥満細胞Mastzellen (ehrlich), 2. 形質細胞Plasmazellen (Waldeyer),3. 断悦細胞Clasmatocyten (Ranview).一部の学者によるとこれらの細胞は白血球に由来するという.そしてこれらに共通なことは細胞体が細大の差こそあるがいずれも顆粒をかなり沢山にもっていることである.

 肥満細胞(図64)はずんぐりした大きい細胞である.水に溶ける粗大な小球状の顆粒が細胞体をぎっしり充たしていて,そのために核がしばしば全くかくされている.この顆粒は塩基性アニリン色素に染まる(metachromatisch, 染色に使う色素と違った色調で染まる).

 この種の細胞は血管のそばや上皮層の近く,ならびに若い疎性結合組織のなかにみられる.動物が飢えた状態になっても,肥満細胞は存在しており,その特色を保っている.だから動物の全身的な栄養状態や局所的に高まった栄養状態とこの細胞は無関係である.それゆえ,肥満細胞という名前はむしろ細胞じしんが顆粒に富んでふくれていることにあてはまる.この細胞はヘパリンおよび若干の段階のヴイタミンを有している(Hirt, Verh. anat. Ges.1938).

 形質細胞の形はいろいろで,円いこと,卵円形のこと,紡錘状のこともあり,数個の突起をもつこともある.原形質は塩基性アニリン色素で暗く染まるが,明瞭な顆粒構造を示さない.この細胞は主として血管の周囲に存在する.核は球形で,少数の大きいクロマチン小塊が核膜の内面に付着している(車輪核Radkern) (図65).

 断裂細胞組織球Histiocyten (Goldmann 1909),または大食細胞Makrophagen (Metschnikoff 1892),または休止遊走細胞ruhende Wanderzellen oder Polyblasten (Maximow 1906),または断裂分泌細胞rhagiocrine Zellen (Renaut 1907),または外膜細胞Adventitiazellen (Marchand 1898)とよばれるものと同一の細胞である.その細胞体は大きくて,多くの場合紡錘状を呈し,細胞体が広がっていて,顆粒に富み,また多数の液胞によって貫かれている.アメーバ様の運動をする.断裂脂肪という名前のおこりはその細胞体が部分的に切れて,その離れた部分は直ちにこわれてしまうが,核をもつ細胞体の主部は再生するという特性にある.Ranvierはこれを一種の分泌現象とみなしたものである(図64, 65)

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最終更新日13/02/03

 

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