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絞輪の役目としては軸索と周囲のリンパとのあいだの物質の交流をたやすくする.かくしてその存在は軸索の物質代謝に役立つと考えるべきであろう.

[図129]軸索の構造 (Betheによる.)

 切れ込みの第2の型は髄鞘のみに関係するのであって,1個の輪間節の中で,髄鞘はシュミット・ランターマン切痕という細かい漏斗状の切れ込みによって,1列をなしてならぶいくつかの小さい円柱円錐分節zylindrokonische Segmenteに分かれている.シュミット・ランターマン切痕はあるいは中心端の方へ,あるいは末梢端の方へ傾いた斜めの方向をとっている.そしてすでに新鮮な神経線維でも見られるのである.この切痕をつくっている詳細な物質は接合質に近縁のものである.

 b)シュワン鞘をもたない有髄線維は多量に集まって中枢神経や視神経の白質を形成している.シュワン鞘がない変わりにここには中枢性のグリア(神経膠)zentrale Neuroglia(図139)があって,その配列の具合といっそう微妙なはたらきにより末梢性のグリアであるシュワン鞘の細胞Schwannsche Zellenとははなはだちがうものといえる.

 2. 無髄神経線維marklose Nervenfasernは特別な被いを全然もたないか,もしくはシュワン鞘のみをもっている.もっともシュワン鞘の核Schwansce Kerneがこれに伴っている.

 a)シュワン鞘をもつ無髄神経線維はまた灰色線維graue Fasern, または膠様線維gelatinöse Fasernとよばれる.主として交感神経にあるが,また豊富に末梢神経の中に存在する.これは非常に薄い髄鞘をもつので,髄の少ない神経線維markarme Nervenfasernとよぶのがいっそう正しい.

 b)シュワン鞘を欠く無髄線維は裸軸索nackte Achsenzylinderという不当な別名をもらっていたことがあるが,そのかなり長いものは人間では嗅糸Fila olfactoriaにあるのみである.これは嗅上皮存在する感覚細胞の中心性突起であって,0.5µの太さにも達しない.

 初めから無髄の線維,あるいは途中で無髄になった線維が末梢部で,そのシュワン鞘を失うと,軸索あるいは原線維束が裸になるわけである.末梢の末梢部はこの点では脳および脊髄で神経線維がおこるところと似ている.そのおこる所は髄鞘をもたず,またシュワン鞘もないのである.シュワン鞘をもたない無髄の神経原線維や原線維束は身体の末梢部のみでなく,中枢神経の内部のも求心性に導く神経の終末分枝の所に非常にたくさん存在している(AmbronnとHelkd, Sitzber. sachs. Ges. Wiss., Leipzig ,1895).

[図130]無髄神経線維 解いてばらばらにしてある.

[図131]ダツ(硬骨魚類)の鼻窩より得た神経原線維束.ほぐれてごく細かい静脈粒状の原線維となっている.(M. Schultze)

神経線維の太さKaliber der Nervenfasern

 神経原線維は中枢性のものと末梢性のものとを間わず,すべてほぼ同じ太さである.しかし原線維の集束すなわち軸索ははなはだしく太さが変動する.

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最終更新日11/05/03

 

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