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2. 骨鼻腔Cavumnasiossei, knöchene Nasenhöhle(図226, 269, 270, 272, 273275)

 骨性の鼻腔は正中面におかれた鼻中隔の左右両側にある.(もっとも鼻中隔は多くの場合, どちらかの側へまがっているが.)骨鼻腔は前方では両側いっしょに梨状口Apertura piriformisで外に開き,うしろでは左右それぞれ1つの後鼻孔Choanaで開いている.鼻腔にはいわゆる副鼻腔Nebenhöhlenが開口する.すなわち篩骨洞の各群・蝶形骨洞・前頭洞・上顎洞である.

 1側の骨鼻腔には上・下・外側・内側・後の5壁があり,うしろ(後鼻孔)と前の2口がある.前では両側の骨鼻腔が共通の梨状口をもって外に開くのである.

 最も単純なかたちをしているのが下壁すなわち骨鼻腔の底であって,上顎骨の口蓋突起と口蓋骨の口蓋板との鼻腔面Facies nasalisでつくられており,滑かで,凹面をなして前後および左右が高くなっている.

 前の方には切歯孔がある.唯一の縫合は横口蓋縫合Sutura palatina transversaであるが,若い人ではそのほかに切歯縫合Sutura incisivaがある.

 内側壁は鼻中隔Nasenscheidewandで,骨鼻中隔Septum nasi osseumと中隔鼻背軟骨の中隔板Lamina septi cartilaginis septodorsalisとからできている.そのうち骨性の部分は篩骨の正中板・鋤骨・鼻稜の側面・蝶形骨稜である. これら各部のあいだの縫合は鋤骨上顎縫合Sutura vomeromaxillaris, 鋤骨口蓋縫合S. vomeropalatina, [][]縫合S. vomeroethmoidea, [][]縫合S. sphenoethmoideaである.表面の凹凸としては次のものに注意すべきである:正中板の上部には嗅糸の通る多数の溝があり,鋤骨の外面には中隔後鼻動脈および同名の神経枝の通る溝や管がある.また特別の注意に価するものは,鋤骨の上稜に平行して,これと正中板の下縁とのあいだを後上方に伸び,しばしば蝶形骨にまで達する細長い軟骨である.これを中隔鼻背軟骨の蝶骨突起Processuss phenoideus cartilaginis septodorsalis(図226)という.

 上壁は鼻骨の内面・前頭骨の小部分・篩板および蝶形骨でつくられている(図269).

 後壁は鼻腔の上部にしかなくて,蝶形骨体の前面によってつくられており,ここにはまた蝶形骨洞の開口がある.

 外側壁が最も理解しにくいところである.その構成にあずかるものは1. 上顎骨,2. 口蓋骨,3. 下鼻甲介,4. 篩骨, 5. 鼻骨の5つの骨であって,これらの部分によって多数の深い溝や湾入や開口がつくられるのである.まず普通3つ存在する鼻甲介によって,前後の方向に通る3本の深い道が分けられる.すなわち1. 上鼻道Meatus nasi superior, oberer Nasengangは上鼻甲介の下に,2. 中鼻道Meatus nasi medius, mittlerer Nasengangは中鼻甲介の下および外側に,3. 下鼻道Meatus nasi inferior, unterer Nasengangは下鼻甲介の下および外側にある.これら3つの道は前方,後方,および内側方で単一の空所に移行している.内側にあるこの単一の空所は総鼻道Meatus nasi communisと呼ばれて,鼻中隔のわぎで鼻腔の上から下まで続いている細いすきまである.また上中下の鼻道は後方では鼻咽道Meatus nasopharyngicusに続いている.ここには上の方から蝶篩陥凹Recessus sphenoethmoideusが下りて来て合する.これは蝶形骨体の前壁と篩骨迷路の後壁のあいだにある溝で,その深さやひろがりは非常にまちまちである.縫合としては[]鼻甲介縫合Sutura lacrimoconchalis, 口蓋上顎縫合S. palatomaxillaris,口蓋篩骨縫合S. palatoethmoidea,鼻甲介上顎縫合S. conchomaxillaris,鼻甲介口蓋縫合S. conchopalatina, 篩骨上顎縫合S. ethmoideomaxillarisがある. 下および中鼻甲介が自由端をなして突出している部分を切りとると,ほかの重要なものが沢山みえてくる.下鼻道には次の3つの骨が寄り集まっているのが見られる.1. 上顎骨の鼻腔面,2. 下鼻甲介の上顎突起,3. 口蓋骨の上顎板.また下鼻甲介が付着する線の前部の下には,鼻涙管の下口(鼻腔口)がみとめられる.

 中鼻道の外側壁は前方に涙骨があり,それに下方から下鼻甲介の涙骨突起が付き,それから鈎状突起,最後に口蓋骨の上顎板がある.鈎状突起は飾骨迷路の最も前方の部分から起って,青竜刀のようにまがって伸び,下鼻甲介の篩骨突起にまで達する.こうして鈎状突起は,ばらばらにした骨では1つの大きい口としてみられる上顎洞の入口を, 2つのすきまに分けているのである.鈎状突起は大きさ,幅,弯曲,隣接する他の骨との関係などの点で,臨床的に重要なさまざまの変異を示すので,鼻甲介や副鼻腔などの多数の変異と同様に,この方面の専門医学に関する書物では十分に取扱われるところである(Zuckerkandl, Hajek, Killianを参照せよ).

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最終更新日13/02/03

 

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