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2. 側頭下窩Fossa infratemporalis(図274, 275)

 側頭下窩は側頭窩の下方のつずきをなしているが,側頭窩より,もずっと深く内側へ向って入りこんでいる.側頭下窩の内側部と後部には,蝶形骨の大翼の側頭下面と側頭鱗の水平な部分とでできた特別の天井がある.側頭下窩の内側の限界は翼状突起によってできており,前壁は上顎骨の側頭下面,ならびに歯槽突起のこれに続く部分によってつくられている.

 側頭下窩は一部は下顎骨の筋突起によって,また一部は側頭筋の下部, 外側翼突筋ならびに血管や神経によってみたされている.

 側頭下窩は下眼窩裂によって眼窩に続き,また翼状突起の根と上顎結節のあいだに深く入りこんで,狭い峡谷をつくっている.これが翼口蓋窩である.

3. 翼口蓋窩Fossa pterygopalatina (図268)

 翼口蓋窩は上は蝶形骨によって,前は口蓋骨と上顎骨によって,うしろは翼状突起と蝶形骨大翼の蝶[形上]顎面によって境されている.またその内側壁は口蓋骨の上顎板によってつくられている.翼口蓋窩は外側では細いすきまによって側頭下窩につながっている.また翼口蓋窩は上の方が広くて,下へゆくほど狭くなって翼口蓋管Canalis pterygopalatinusに移行する.

 この狭い空間にその付近の多数のものが開口している.すなわち後壁には正円管Canalis rotundusと翼突管Canalis pterygoideusが開き,内側は大きい翼口蓋窩へ開いている.また前上方では下眼窩裂によって眼窩とつながっている.

δ)頭蓋底の外面Facies externa baseos cranii(図275)

 頭蓋の下部は前後には後頭鱗の界上項線から切歯まで,横の方向には一側の歯列弓および乳様突起から他方のそれらに至るまでの範囲である.下顎骨をとりさると,前部・中部・後部が区別される.

 前部は口腔の天井と鼻腔の床とをなす部分で,骨口蓋上歯列弓Arcus dentalis maxillarisとからできている.(この部分の詳細こついては192頁 ,口蓋のところを見よ.)

 しかしまた臓弓性の骨絡を全部とり去ってしまうことも可能で,そうすると神経頭蓋Neurocraniumの底の前部が眼前にあらわれる.

 頭蓋底の中部すなわち中央の領域は骨口蓋の後縁から大後頭孔の前縁までである.また側方へは側頭下稜, 頬骨弓および乳様突起のところまでのびている.この中央の領域は非常に複雑で,それ自身がまた特別の中央部を抱いている.それが頭蓋底の咽頭領域Schlundfeld der Schädelbasis(図271)であって,咽頭円蓋をうけて,前方へ鼻腔に続いている. 頭蓋底の中央の領域の前外側部は側頭下窩Fossa infratemporalisをなしていて,これについてはすでに述べた.

 咽頭領域の形は,その境界を次のような1本の線によって言い表わすことができる.この線は咽頭結節のあたりから,ずっと前方にはり出している頭長筋起始部の前縁を劃して錐体後頭裂に達し,さらに頚動脈管の外口の前を蝶形骨棘の方に向って,この棘からは口蓋帆挙筋によってへだてられながら進み,そこから蝶形骨の翼状突起の内側板のつけ根に達する.それより内側では,咽頭領域は鼻腔の天井につづくのである.

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最終更新日13/02/03

 

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